最新記事

イラン

イランの韓国籍タンカー拿捕の裏にトランプ恐怖症

South Korea Sending Troops, Contacting Other Nations After Iran Seizes Ship

2021年1月6日(水)18時05分
トム・オコナー

ソマリア沖で韓国船を襲う海賊船対策に出動した韓国海軍の軍艦 クレジット:REPUBLIC OF KOREA NAVY

<タンカーをイラン革命防衛隊に拿捕された韓国は自国軍を現場に派遣、他国の協力を求めているが>

韓国船籍の石油タンカーがペルシャ湾でイランに拿捕された事件で、韓国は急遽、現地近海に自国の軍を派遣。さらに、周辺地域で活動する国々に事態打開のための協力を求めている。

イランの精鋭部隊、革命防衛隊は1月4日、指揮下のズルフィカール艦隊が、サウジアラビアを出てペルシャ湾を航行中の韓国籍のタンカーを「海洋環境に関する法律に違反した」という理由で拿捕したと発表した。

このタンカーの名は「韓国ケミ号」。石油化学物質の最大積載量は7200トンに達し、韓国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー国籍の船員が乗り組んでいたと言われている。船と船員はイランのバンダルアッバス港に移送され、拘束された。革命防衛隊は「この問題は司法当局によって対処される」と述べた。

この事件を受けて、韓国国防省当局者は本誌に対し、韓国は「わが国の石油タンカーの救助に、ホルムズ海峡付近に海賊対処部隊を派遣した」と語った。

湾岸水域の破壊活動とイランによる船舶の拿捕を防止するために結成された「国際海事保安機構」の支援を求めるかと尋ねられた韓国の政府当局者は、「韓国政府と多国籍海賊対処海軍部隊の緊密な協力関係」を求めていると語った。アメリカ主導のこの団体は、船舶の安全航行保護を目的に2019年にホルムズ海峡付近で活動を開始。少なくとも9カ国が参加している。

高まる湾岸地域の緊張

ホルムズ海峡は、世界で最も重要な海上石油交通の要諦であり、ドナルド・トランプが2017年に大統領に就任して以来、エスカレートするアメリカとイランの緊張と危機の火種になった。

アメリカと韓国は軍事同盟国であり、敵である北朝鮮からの攻撃を防ぐために相互防衛の関係が確立されている。いかなる「外部武力による攻撃」の場合にも、それぞれが相手の援助に駆けつけることが義務付けられている。

ペルシャ湾における衝突の危険拡大の不安は、イラク革命防衛隊クッズ部隊司令官カッセム・ソレイマニが米軍に殺害されて1年の記念日を迎えた先週末へ向けて、日増しに高まってきた。

「アメリカの行為は、国際的な法と規範を軽視するトランプ政権の本質と、何としてもイランを屈服させることができないという絶望を全世界に示している」と、イラン国連代表部のアリレザ・ミールユーセフィー報道官は本誌に語った。「イランはトランプとその同盟国の仕打ちに耐えてきた。今後も従来通りの外交・安全保障政策を継続する」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中