注目のキーワード

最新記事

メルケル

メルケル演説が示した知性と「ガースー」の知性の欠如

2020年12月15日(火)12時52分
藤崎剛人(ブロガー、ドイツ思想史)

「ガースーです」と同じ日、メルケルは国民に厳しい感染対策が必要な理由を情熱的に説いた(12月9日、ベルリンの連邦議会で) Hannibal Hanschke-REUTERS

<新型コロナ危機のなか珍しく情に訴えたメルケルは、ウイルスというファクトから目を背けることはできないと言い、菅は「こんにちは、ガースーです」と言った>

ドイツのメルケル首相の演説が世界的に話題を呼んでいる。同国のコロナ死者数が過去最多の1日590人に上った12月9日。連邦議会において行われた演説で、首相はいつになく感情を剥き出しにして、クリスマスシーズンにおける市民の自粛を訴えた。例年のようなクリスマスを楽しめないことは「本当に心から残念なことではあるが」と首相は述べる。「1日590人の死は受け入れることができないというのが私の見解だ」。情熱的なスピーチは得意ではないとみられていたメルケルが、突如身振り手振りまで込めてコロナウイルスの拡散防止を訴える姿はインパクトがあり、その数分間は切り取られて、世界的に知られるようになった。

この演説では、コロナウイルス対策として12月中旬からの部分的なロックダウンおよびそれに対する財政支援なども説明されている。また、来年から始まるワクチン接種についてのロードマップの概要も首相は示した。

「私は啓蒙の力を信じている」


コロナの危機を訴える演説の途中で、メルケル首相にヤジが飛んだ。「(コロナの死者数が増えるという予測は)まったく証明されてないんだ!」ヤジを飛ばしたのは極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の議員で、同政党はコロナ禍における移動や経済活動の制限について全面的に反対している。世界各国の極右ポピュリズム運動・政党はコロナの危機を過小評価する傾向にあるが、それはドイツでも例外ではない。

メルケルは普段はヤジに反応することはないのだが、この日は違った。彼女は、以下のように応答したのだ。


「私は啓蒙の力を信じている。今日のヨーロッパが、まさにここに、このようにあるのは、啓蒙と科学的知見への信仰のおかげなのだ。科学的知見とは実在するのであって、人はもっとそれを大切にするべきだ。私は東ドイツで物理学を志した。しかし私が旧連邦共和国(=西ドイツ)出身だったならば、その選択はしなかったかもしれない。東ドイツで物理学を志したのは、私には確信があったからだ。人は多くのことを無力化することができるが、重力を無力化することはできない。光速も無力化することはできない。そして他のあらゆるファクトも無力化することはできない、という確信が。そして、それはまた今日の事態においても引き続き当てはまるのだ」。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

景況感、非製造業が製造業を逆転 原材料高が重し=6

ワールド

中国の対ロ軍事支援見られず、商務省措置は通常対応=

ワールド

22年路線価は0.5%上昇、2年ぶりプラス コロナ

ビジネス

中国製造業PMI、6月は51.7に上昇 1年1カ月

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:広がるインフレ 世界経済危機

2022年7月 5日号(6/28発売)

急激なインフレ、食糧・エネルギー不足、米バブル崩壊...... 「舵取り役」なき世界経済はどこへ

人気ランキング

  • 1

    【映像】飼い主のことが好きすぎる「寂しがり」な愛犬

  • 2

    【閲覧ご注意】動画:ヒトの皮膚に寄生するニキビダニ

  • 3

    メーガン妃、実姉からの訴訟の取り下げを申し立てるも却下される

  • 4

    留守のたび荒らされる寝室、隠し撮りに映ったのは「…

  • 5

    「ここまで愚かだったとは」──チャールズ皇太子、ス…

  • 6

    【映像】軍事侵攻後に死んだロシアのバレリーナたち

  • 7

    「プーチンの犬」メドベージェフ前大統領の転落が止…

  • 8

    史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・…

  • 9

    【映像】多分使わないナイフを運んでいく「強盗ガニ」

  • 10

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 1

    【映像】飼い主のことが好きすぎる「寂しがり」な愛犬

  • 2

    韓国アイドル、ファンにもみくちゃにされて腕を負傷する「問題シーン」

  • 3

    【動画】「まるで地獄から来たトラック」 中国「犬肉祭」に出荷された犬たちを救出

  • 4

    史実はNHK大河ドラマとまったく違う ── 源頼朝が弟・…

  • 5

    【閲覧ご注意】動画:ヒトの皮膚に寄生するニキビダニ

  • 6

    【衝撃映像】小型犬がハクトウワシに連れ去られる瞬間

  • 7

    沖縄の少女たちの経験は日本の若い女性に起きている…

  • 8

    留守のたび荒らされる寝室、隠し撮りに映ったのは「…

  • 9

    メーガン妃、実姉からの訴訟の取り下げを申し立てる…

  • 10

    メーガン妃「いじめ調査」結果はクロか? 「次は差別…

  • 1

    治験中のがん新療法、18人全員の腫瘍が6ヶ月で消失 専門医「前代未聞」

  • 2

    女性を踏み殺したゾウ、葬儀に現れ遺体を執拗に踏みつけ去る インド

  • 3

    遺体ばかりか負傷兵も置き去り──ロシア軍指揮官のプロ意識がさらに低下(米戦争研究所)

  • 4

    【映像】突進してくるゾウの赤ちゃんが「ちっとも怖…

  • 5

    極超音速ミサイル「ツィルコン」はウクライナの戦況…

  • 6

    英ルイ王子の「やんちゃ」ぶりで、キャサリン妃に「…

  • 7

    インド人初のK-POPスター誕生へ 4000人から選ばれた…

  • 8

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 9

    中国側に「寝返った」ジャッキー・チェン、「父親が…

  • 10

    英ヘンリー王子夫妻、軽い扱いに「激怒」してイベン…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月