最新記事

菌類

インドで「光るキノコ」の新種が見つかる......地元では、懐中電灯の代わり

2020年11月27日(金)16時45分
松岡由希子

地域住民から「電気キノコ」と呼ばれている...... Photo by Steve Axford.

<インド北東部メーガーラヤ州の竹林で発光菌類の新種が見つかった。地元では、この生物が生えている竹串が懐中電灯の代わりに利用されているという...... >

インド北東部メーガーラヤ州の竹林で発光菌類の新種が見つかった。ヌナワタケ属(ロリドマイシス)の一種で、枯れたマダケ(フィロスタキス)に生息することから、「ロリドマイシス・フィロスタキス」と命名されている。

地元では、懐中電灯の代わりに利用されているという

中国科学院とインド・西ベンガル州立大学の共同研究チームは、インド北東部アッサム地方で2週間にわたる実地調査を行った。この地域では多種多様な菌類が生息し、なかでも、地域住民から「電気キノコ」と呼ばれる生物は、研究チームの関心を惹き付けた。

この生物は枯れた竹に生息し、夜になると、生物発光により、菌糸体から柄にかけて緑の光を発する。そのため、地元では、夜間、この生物が生えている竹串が懐中電灯の代わりに利用されているという。

研究チームは、この生物のサンプルを採取して研究室に持ち帰り、詳しく分析した。その結果、形態学的特徴と系統発生解析から、ヌナワタケ属の新種と同定された。一連の研究成果は2020年9月、学術雑誌「ファイトタクサ」で発表されている。

Roridomyces1127b.jpg

Photo by Steve Axford.

光で昆虫を惹き付けて自らの胞子を拡散させるため

ヌナワタケ属は非常に繊細で、高温多湿の環境を好む。これまでに12種が確認されており、そのうち5種が生物発光する。インドでヌナワタケ属の菌類が見つかったのは、今回が初めてだ。

発光菌類は、光で昆虫を惹き付けて自らの胞子を拡散させようとする。それゆえ、一般に、特定の昆虫との相互作用を通じて進化する「共進化」を経てきたと考えられている。

この生物は、枯れたマダケのみに生息していた。研究チームは「この生物が好む特別な要素が枯れた竹に存在するのかもしれない」として、さらに詳しく調べている。

Roridomyces1127c.jpg

Photo by Steve Axford.

地球には220万〜380万種の菌類が存在するとみられ、これまでに約12万種が同定されている。そのうち生物発光するのはおよそ100種で、欧州や北南米、東南アジアなどの温帯・熱帯地域で見つかっている。日本でも、ヤコウダケやシイノトモシビタケなどが生息する。

広大な国土を持つインドでは菌類の調査は十分にすすんでおらず、国内で発光菌類の生息が確認された例はまだわずかだ。1999年1月に西ガーツ山脈、2012年7月に東ガーツ山脈、2012年9月にケーララ州で計4件が確認されている。研究チームは、実際にインドで生息する発光菌類の個体数はもっと多いとみて、今後も調査をすすめる方針だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

フィッチが仏国債格下げ、過去最低「Aプラス」 財政

ビジネス

中国、米の半導体貿易政策を調査 「差別的扱い」 通

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中