最新記事

新型コロナウイルス

コロナ拡大でも経済的既得権にしがみつく中高年を憎む若者が世界に急増、政治不安が増幅する

Pandemic, Unemployment Boost Resentment Against Older Generations: Survey

2020年11月18日(水)17時54分
ベンジャミン・フィアナウ

新型コロナの検査を受けるため列に並ぶニューヨークの学生たち(2020年8月)Mike Segar-REUTERS

<とくに若者を怒らせているのは、行動制限に従い失業している若者たちの苦境に目もくれず、感染拡大を助長してきた親世代や政治指導者>

新型コロナウイルス再拡大のさなかにあって、世界中の若者は、年上の世代に対する不満を募らせている。経済は低迷し、機会は失われ、感染予防のための行動制限の保護対象であるはずの中高年は規則に従っていないからだという。

11月17日に発表された英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の調査によると、対象となった16歳~30歳までの若者800人以上が、新型コロナウイウルス感染拡大による行動制限と社会のリーダーとしての責任をとらない年長世代に対する怒りを表明した。

収入減少と雇用不安について若者がどう感じているかを探ったこの調査で、多くの若者が、学生ローンの負担、新型コロナ流行による活動制限、親と同居しなければやっていけない18歳~29歳の割合が過去最高という現状に不満と怒りを感じていることが明らかになった。

経済的苦痛に加えて、「誤った考え」をもつ40歳以上の人々が多くの場合、公衆衛生ガイドラインに逆らい、感染を拡大させていると訴える回答者も多かった。

「新型コロナの被害は平等じゃない。1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えたミレニアル世代のほうがつらい部分を引き受けなくてはならない」と、カナダのモントリオール出身のポリーナ・R (30歳)は言う。「私たちが失業したり、貧しくなったりしていることに気づかない人々を守る必要があるの?」

年長世代は責任をとらない

FTの調査は「これらの不満は、年長の世代に対する若者の怒りを強め、政治不安を増幅する」と述べている。回答の多くが、無気力、不安、怒り、さらには自殺願望といった感情に支配されていた。「私たちは皆、リーダーシップの危機の責任を負わされている」と、23歳のフランス人男性は嘆いた。

アメリカ、ヨーロッパ、南アジアの回答者は、年配の人々が行動制限に従わないことが感染をさらに悪化させていると述べた。一方で、20代半ばの回答者の多くが、自分もソーシャル・ディスタンスを守らないことで復讐している、と語っている。「(年上の)権力者はこの問題で責任を取ろうとしていない。誰も何もするつもりがないのに、人生を楽しまず我慢するなんて、とんでもない」と、あるモントリオールの女性は語った。

「両親と一緒に家にこもっている間、私はきちんと規則を守った」と、アメリカ人のメアリー・フィネガン (23歳)は言う。「半年もの間、お酒を飲まずに過ごした。デートを再開するためならコロナ感染のリスクを冒してもいい」

経済協力開発機構(OECD)によると、25歳未満の若者は、26歳から64歳までの世代に比べて、パンデミックの結果として職を失う確率が2.5倍高かった。アメリカでは現在、労働力の圧倒的多数を若者が占めているにもかかわらず、ベビーブーム世代がミレニアル世代の10倍の富を支配している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ハッカー集団が政府にサイバー攻撃と発表 F5の

ワールド

ガザへの国際部隊派遣計画が始動、治安安定化へ=米上

ワールド

マダガスカル、軍大佐が大統領就任へ アフリカ連合は

ワールド

米国防長官、ウクライナ侵攻継続ならロシアに「代償」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中