最新記事

ノーベル平和賞

ノーベル平和賞を受賞したWFPのトップはトランプ支持者

Nobel Prize-Winning program led by pro-Trump former Republican governor

2020年10月12日(月)15時58分
ブレンダン・コール

ベラルーシ、ミンスクの空港に駐機するWFPの輸送機(2018年4月) Vasily Fedosenko-REUTERS

<昨年、88カ国で9700万人の飢えた人々に食糧を届けたWFPの事務局長を任命したのは、トランプ政権だった>

2020年のノーベル平和賞は、世界食糧計画 (WFP)に授与された。飢餓と闘い、世界の紛争地域で支援活動を行った実績が評価された。

WFPの事務局長はアメリカ人。共和党の政治家で、元サウスカロライナ州知事のデビッド・ビーズリーだ。受賞を知ったビーズリーは「言葉が出なかった。こんなことは生まれて初めてだ」とニジェールのAP通信に語り、「衝撃だった。とても驚いた」と付け加えた。

その後、ツイッターに動画を投稿し、WFPのチームの功績を称えた。

ビーズリーは6日、国連安全保障理事会に対し、シリアやイエメンの紛争、南スーダンのような地域の危機の深刻化、それに追い打ちをかける新型コロナウイルスのパンデミックによって、政府や民間企業が介入しない限り、飢餓に苦しむ人は前年比で倍増し、2億6500万人に達する可能性があることを指摘した。

「悪いことが同時に起きている最悪の事態だ。新型コロナウイルスの大流行で、われわれは世界的な健康の危機だけでなく、世界レベルの人道主義の存続の危機に直面していることを強調したい」と、ビーズリーは訴えた。支援を要請すると共に、ロックダウンの経済的影響が、ウイルスより多くの死を引き起こす危険性があるとも警告した。

受賞者はトランプゆかりの人物

今回の平和賞では、ドナルド・トランプ大統領も候補に挙がっていた。トランプが候補になるのはこれで2度目。1度目は対立していた旧ユーゴスラビアのセルビアとコソボの経済協力を仲介したという理由で、今回はイスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化の合意を仲介したことが理由になっている。

トランプはこの権威ある賞を受賞できなかったが、ビーズリーはトランプゆかりの人物だ。2016年の大統領選挙では、ビーズリーはトランプを支持した。そして2017年に、当時トランプ政権の国連大使だったニッキー・ヘイリーによってWFPの事務局長に指名された。

ノーベル賞委員会のベリット・レイスアンデルセン委員長は9日、ノルウェーの首都オスロのノーベル研究所でWFPの受賞を発表し、「現在飢餓に苦しむ、または飢餓の危機に瀕している何百万人もの人々に、世界の目が向いてほしい」と述べた。

「WFPは、食料の安全保障を平和の手段にするための多国間協力において重要な役割を果たしている」と付け加え、「戦争と紛争の武器」として利用されてきた飢餓との闘いにおけるWFPの功績を称賛した。

WFPは1961年に国連システムを通じて食糧を提供する試みとして設立され、1963年にスーダンで初のプログラムを開始。それ以来、常に世界で最も飢餓の被害が起きやすい地域に救いの手を差し伸べることを目標に活動している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中