最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選、当日の「誤報リスク」 TV各局は当確の重圧

2020年10月19日(月)10時13分

全米ネットのテレビ放送局などの報道局幹部らは、11月3日の大統領選当夜に向けた準備を進める中で、20年前に起きた悪名高い大統領選報道の顛末(てんまつ)から得た教訓を生かそうとしている。写真は2日未明、ホワイトハウスから報告する米メディアのリポーター(2020年 ロイター/Joshua Roberts)

全米ネットのテレビ放送局などの報道局幹部らは、11月3日の大統領選当夜に向けた準備を進める中で、20年前に起きた悪名高い大統領選報道の顛末(てんまつ)から得た教訓を生かそうとしている。民主党のアル・ゴア副大統領と共和党のテキサス州知事のジョージ・W・ブッシュ(子)氏が対決した選挙だ。

大手テレビ局はこぞって、勝敗を決める最後の鍵となったフロリダ州でゴア氏勝利の見通しを流した後、わずか数時間後にブッシュ氏勝利を報じた。同州での得票差は余りにも僅差で、いったん敗北を認めたゴア氏は1時間後に敗北宣言を取り消した。

選挙結果は1カ月以上たっても決まらなかった。選挙当夜に負けが決まったのはメディアの信頼性だけだった。

フォックス・ニュース・メディアのジェイ・ウォレス社長は「2000年のあの出来事は今なお皆の脳裏に残っていると思う」と語る。フォックスニュースも例にもれず、ゴア氏勝利を当初報じていた。「各局がしのぎを削る中で、大統領の当確を打たなければならないことは分かっているが、あんな風に間違うことだけは避けたい」と話す。

今年の共和党のトランプ大統領と民主党バイデン前副大統領の対決を前に、各テレビ局には選挙報道の正確さと、根拠のない臆測を排除する強い姿勢への要請がかつてないほど高まっている。今回、米国にとって、そして各局にとっての難問は、不正投票の不安をあおる大統領の存在と、有権者の深い分断、集計が長引いて抗議デモや暴力沙汰や訴訟につながる可能性だ。

大手テレビ局はスピードではなく自制を重視

ロイターが大手テレビ5局の幹部にそれぞれインタビューしたところ、選挙当夜の報道についてはスピードではなく自制を重視すること、まだ分かっていないことは何かを不透明にせず、選挙結果の判明の遅れが危機を意味するわけではないとのメッセージを伝えて国民を安心させることも重視するといった意思表明が返ってきた。

NBCニュースのノア・オッペンハイム社長は、同テレビの報道は「何らかしらの筋立てや物語、見込みを伝えるものにはしない」と明言。「それぞれの時点で分かっていること」を伝え、事実のみを確実に伝えることに照準を合わせるとした。

2000年当時の大統領選報道では、NBCの名物記者、ティム・ルサート氏がホワイトボードに走り書きしながら説明するといった光景が繰り広げられたが、今年の場合、多くはもっと科学的な方法になるのは間違いない。各局は、より多くの開票結果を盛り込んだ、より深いデータ分析や、投票やその公正さや誤情報の仕組みを追加的に報じることにいかに多くの投資をつぎ込んできたかを見せつけようとするだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アサヒGHD、決算発表を延期 サイバー攻撃によるシ

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上

ビジネス

日経平均は大幅続落、米中対立警戒で一時1500円超

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 9
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中