最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙、ラストベルトもトランプ離れ コロナ失政批判で地盤動揺

2020年10月26日(月)11時33分

ノーザンプトン郡を含むペンシルベニア第7選挙区で投票しそうな有権者のうち、9月時点でバイデン氏に入れると答えた割合は51%とトランプ氏の44%をしのいだことが、ミューレンバーグ大学とモーニング・コールの調査で判明した。

トランブル郡が属するオハイオ州北部の工業地域の有権者を対象にニューヨーク・タイムズとシエナ大学が10月2─6日に実施した調査では、バイデン氏支持が49%、トランプ氏支持が43%だった。

風向きが変わった原因は新型コロナのようだ。ロイターがトランブル郡とノーザンプトン郡で取材した有権者50人余りは、トランプ氏が新型コロナを軽々しく扱い、自らマスクを常には着用しようとしないばかりか、国民にマスク着用を呼び掛けないことに根深い不満を表明した。

ノーザンプトン郡は、世界最大の鉄鋼メーカーだったこともあるベスレヘム・スチールの牙城だったところだ。同郡の新型コロナによる死者は300人強、死亡率は10万人当たりで約100人と、全米平均の約66人よりずっと高い。

一見すると、飲食店は屋外で客をもてなし、学校の校庭には野球のバットが勢いよくボールを打つ音が響き渡り、人々の生活はほぼ正常に戻っているように見える。しかし、ここの労働者は引き続き一時帰休を強いられ、給与を得られないでいたりしている。同郡の8月の失業率は10.2%と1年前の4.9%から跳ね上がった。

かつては強大な製造業の拠点だったトランブル郡。ゼネラル・エレクトリック(GE)やゼネラル・モーターズ(GM)などの工場閉鎖が相次いできた。現在の同郡はグローバル化の嵐、オピオイド中毒症の社会問題に新型コロナの感染が加わり、地域経済は苦しみにあえぐ。新型コロナの死者は130人強、死亡率は10万人当たり約68人。8月の失業率は1年前の6.3%から11.4%と倍近くになった。

バイデン陣営の攻勢

コートランドのバーで時間を過ごす家具セールスマンのビル・ベベックさん(66)は、トランプ氏がこの前の冬、新型コロナウイルスの危険性を理解していたのに事実を伝えなかったことで、票を失っているとの見方を示した。

4年前にトランプ氏に投票したベベックさんは「われわれはこの感染症がどれほど深刻か、知る権利があったとは思わないか」と語る。かつてはトランプ氏を熱烈に応援していたが、同氏が新型コロナ問題で「完全に大失敗した」と突き放した。

ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が9月に公表したトランプ氏との今年の会話記録によると、トランプ氏は当時、新型コロナの危険性をことさら過小評価していたことを認め、それは国民をパニックにしたくなかったためだったと弁解していた。

実際、バイデン陣営関係者がロイターに明らかにしたところによると、同陣営はこのベベックさんのように、世論調査が示すところの新型コロナに恐怖心を抱く高齢者、かつ16年にトランプ氏に一票を投じたか、棄権していた高齢者層の取り込みを狙う。

16年の出口調査によると、55歳以上の有権者の得票率は当時はトランプ氏が13%ポイントも優勢だった。しかし、今年9月と10月のロイター/イプソス調査では、55歳以上の支持率はバイデン氏が47%、トランプ氏が46%とほぼ二分されている。

民主党候補の支援組織である特別政治行動委員会(スーパーPAC)「アメリカン・ブリッジ21世紀」は、ペンシルベニアやミシガン、ウィスコンシンといった激戦州で計4000万ドルを費やし、16年にトランプ氏を支持した白人、労働者、高齢者の層に照準を合わせた政治広告を強化している。

(Ernest Scheyder記者、Nick Brown記者、Jason Lange記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フランスのコロナウィルス感染第二波が来るのは当然だった・・・・
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

元、対通貨バスケットで4年半ぶり安値 基準値は11

ビジネス

大企業の業況感は小動き、米関税の影響限定的=6月日

ワールド

NZ企業信頼感、第2四半期は改善 需要状況に格差=

ビジネス

米ホーム・デポ、特殊建材卸売りのGMSを43億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中