最新記事

教育

オンライン化しても授業料据え置きに不満爆発 米国で学生の値下げ要求広がる

2020年10月4日(日)18時30分

シカゴのコロンビア・カレッジでは、市内に点在するスタジオや教室で提供するダンス、映画、音楽の専門教育を履修する学生は年間1万4000ドル(約148万円)の授業料を支払っている。米ワシントンのジョージタウン大のキャンパスで4月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

シカゴのコロンビア・カレッジ(ニューヨークのコロンビア大学とは無関係)では、市内に点在するスタジオや教室で提供するダンス、映画、音楽の専門教育を履修する学生は年間1万4000ドル(約148万円)の授業料を支払っている。

その同校が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を理由に、一部の講義を夏場からオンライン化した一方、授業料は据え置いたため多くの学生から不満の声が上がった。

テレビと文化の研究を専攻するニュージャージー州出身のイサイア・ムーアさん(21)もその1人。現在は授業料引き下げと大学の財務の透明性向上を求め、構内での抗議や請願、大学当局との面会を行う学生グループのリーダーを務めている。

ムーアさんは「私たちが受けてきた教育内容にふさわしい授業料になってほしい。未曽有の問題に対して今までにない解決方法が必要な時だ」と語る。

大学側はコスト変わらず抵抗

対面授業が減少し、構内施設を利用する機会も少なくなったという理由で大学に授業料やその他費用の減免を要求している学生は、ムーアさん以外にも増え続けている。

米国では元来、高等教育費用の高騰が長年の問題だったが、この春にパンデミックのために授業中止や構内閉鎖に動いた大学が相次いだため、問題は一気に先鋭化した。学生側が起こした授業料返還訴訟も十数件に上る。

さらに秋学期を迎えて米国の3分の2の大学が少なくとも一部の講義をオンライン形式に切り替えつつある中で、授業料に見合う教育を受けられないという学生の声は高まる一方だ。

ただ、コロンビア・カレッジを含めた多くの大学は、授業料引き下げに応じようとしていない。講義が対面かオンラインか、あるいは2つの併用かにかかわらず、職員の給与や大学の維持費用は変わらないからだという。

コロンビア・カレッジは声明で「これら3方式のどれであっても、大学は各コースで期待される成果を挙げて卒業に向けた単位を取得してもらうようにする」と述べ、包括的でしっかりした秋学期を提供していると強調した。

一方、ジョージタウン、プリンストン、ノースウエスタンといった一部大学は授業料と諸費用を引き下げた。

そのノースウエスタン大でも、10月1日からの授業料支払いをボイコットすると警告する学長宛て書簡に署名した175人の学生は、授業料10%の引き下げという当局の決定に満足していない。この書簡で学生側は10%カット前の6月に実施された3.5%の引き上げの撤回に加え、少なくとも3割の削減を要求している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレに忍耐強く対応、年末まで利下げない可能性=

ワールド

NATO、ウクライナ防空強化に一段の取り組み=事務

ビジネス

米3月中古住宅販売、前月比4.3%減の419万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請、21万2000件と横ばい 労働
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 4

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲…

  • 7

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 8

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 9

    インド政府による超法規的な「テロリスト」殺害がパ…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中