最新記事

イスラム過激派

フィリピン、自爆テロ関与のアブ・サヤフ幹部ら殺害・逮捕 逃走メンバーが新たなテロの可能性も

2020年9月30日(水)08時48分
大塚智彦(PanAsiaNews)

銃撃戦で殺害されたアルシバール・サワジャン容疑者のアジトからは多数の武器が発見された。 GMA News / YouTube

<フィリピンを恐怖に陥れたテロ組織に壊滅の日が近づく?>

中東のテロ組織「イスラム国(IS)」と関係が深いとされるフィリピンのイスラム系テロ組織「アブ・サヤフ」のメンバーに対する掃討・壊滅作戦を進めているフィリピン陸軍などの治安部隊は9月28日、南部ミンダナオ島西部サンボアンガ半島地域で「アブ・サヤフ」と激しい銃撃戦となった。

その結果殺害したメンバーの身元を確認したところ「アブ・サヤフ」幹部で複数の自爆テロ、爆弾テロに関与したとして指名手配中の容疑者らの身元を確認。さらに残党の追撃を続けていることを陸軍南部軍管区関係者が地元メディアなどに28日明らかにした。

フィリピンでは8月24日に、南部スールー州ホロ島にあるホロ市中心部で連続自爆テロ事件が発生し、15人が死亡、70人以上が負傷する事件が起きている。

同事件発生を受けてドゥテルテ大統領は「フィリピン人として治安部隊がアブ・サヤフを根絶するために実施するいかなる作戦も支持する。テロリストである彼らにもうフィリピンでは居場所も将来もない」(8月30日にホロ市内の自爆テロ現場を視察した際の発言)と、軍や警察に徹底的な「アブ・サヤフ掃討・壊滅作戦」を厳命。今回の事件はその作戦の成果とされている。

一方で、ホロ市内の連続自爆テロで容疑者として行方を追っている「アブ・サヤフ」の爆弾製造専門家ら最重要手配容疑者3人はいまだに発見に至っておらず、治安当局はさらに追撃、掃討作戦を継続している。

地域リーダー1人の身元確認

フィリピンメディアの報道などによると9月28日、ホロ島パティクル町に「アブ・サヤフ」とみられるメンバー約40人が集まっているとの情報を陸軍が入手。45歩兵旅団の兵士らが現場に急行したところ集団と遭遇、銃撃戦となった。数時間の銃撃戦で現場に残された遺体を確認したところ、アルシバール・サワジャン容疑者の身元が確認されたという。

アルシバール容疑者は8月24日のホロ市連続自爆テロ事件への関与が疑われ、逃走中のムンディ・サワジャン容疑者の親族で「アブ・サヤフ」の地域指導者の1人とされる幹部テロリスト。

アルシバール容疑者もムンディ容疑者もともに現在ISフィリピン支部を率いて潜伏中とされるハティブ・ハジャン・サワジャン容疑者の血縁で、治安部隊による発見逮捕が急がれていた。

一部報道でハティブ容疑者も治安部隊との戦闘で死亡したとの情報もあるが、軍や警察はこれまでのところ「死亡情報」は確認しておらず、なお潜伏、逃走中としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独消費者信頼感指数、5月は3カ月連続改善 所得見通

ワールド

バイデン大統領、マイクロンへの補助金発表へ 最大6

ワールド

米国務長官、上海市トップと会談 「公平な競争の場を

ビジネス

英バークレイズ、第1四半期は12%減益 トレーディ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中