最新記事

感染症

水にひそむ「脳を食べるアメーバ」で少年が死亡

Two Boys in U.S. Die From Brain Eating Amoeba

2020年9月14日(月)16時50分
ハナ・オズボーン

脳を食べるアメーバ、フォーラーネグレリア(学名ネグレリア・フォーレリ)の3Dイラスト。 Dr_Microbe-iStock.

<湖やプールなどの淡水に棲み、鼻から入って脳を餌にするアメーバがまた出現。アメリカで少年2人が犠牲になった>

アメリカで2人の少年が脳を食べるアメーバに感染して死亡した。テキサス州のジョサイア・マッキンタイア(6歳)は発症の約1週間後に亡くなり、フロリダ州のタナー・レイク・ウォール(13歳)は、湖で泳いだ日から数日後に死亡。湖でアメーバに感染したとみられている。

この2人の死亡に先立って、インドの屋内プールで泳いだ後、同じアメーバに感染して死亡した44歳の男性の例がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で報告されていた。この症例を発表したのは、サンタクララバレー医療センターの医師だが、診断と治療がどこで行われたかは明らかではない。

3人の死の原因となったのは、フォーラーネグレリア(学名ネグレリア・フォーレリ)というアメーバだ。

フォーラーネグレリアは、湖、川、温泉などの淡水でよく見られる単細胞生物だ。また水の塩素消毒が十分ではないプールや、汚染された水道水にも生息していることがある。

このアメーバは通常、鼻から人体に侵入する。そして脳に到達すると、原発性アメーバ性髄膜脳炎を引き起こす。これは中枢神経系の病気であり、脳とその周辺に炎症を引き起こし、破壊する。患者はたいていの場合、感染から5日後に死亡する。

患者の反応がおかしい

原発性アメーバ性髄膜脳炎は非常にまれな病気だ。米疾病管理予防センター(CDC)の2018年の報告書は、アメリカにおけるフォーラーネグレリアの死者数は年間16人程度と推定する。

44歳の男性は救急病院に到着した時点で、激しい咳に苦しみ、意識は混濁していた。症状は救急搬送される前日から現れていた。そしてその5日前に泳いでいたことが明らかになった。

体温は39.8度、心拍数は毎分120に上がっていた。報告によれば「質問に答えることはできず、目を刺すような素振りをしてもまばたきをしなかった。だが脳幹の反射は保たれており、痛みを伴う刺激を与えると、腕と足をひっこめようとした」。

当初、男性には細菌性髄膜炎の抗生物質が投与された。熱は少し下がったが、意識障害は改善しなかった。さらなる検査で、フォーラーネグレリアの感染が明らかになった。報告によればそれは、「生存の記録はまれで、たいていは死に至る」感染症だ。男性は病院搬送から5日後に死亡した。

<参考記事>人間の脳を食べるアメーバに感染、米サーファーが死亡
<参考記事>「脳を食べるアメーバ」北上中?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRB議長発言で12月利下

ビジネス

マイクロソフト、7─9月売上高が予想上回る Azu

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、12月1日でバランスシート縮小終了 短期流
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 7
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中