最新記事

中東

レバノンの港で再び火災、国境ではイスラエルのドローンが墜落し緊張走る

Lebanon Battles New Beirut Port Fire, Downs Israel Drone As Crises Continue

2020年9月11日(金)15時50分
トム・オコナー

大爆発の衝撃もさめやらないなかの火災に住民の動揺が広がった Mohamed Azakir-REUTERS

<経済危機でレバノン国民の政府不信が止まらない一方で、ヒズボラとイスラエルの対立も激化>

先月、発生した大爆発で広範囲が破壊されたレバノンの首都ベイルートの港で10日、再び火災が発生した。一方、レバノン軍は南部国境を通過するイスラエルのドローンを撃墜したと発表し、緊張が高まっている。

レバノン軍は10日、ベイルートの港の石油とタイヤを保管する倉庫で発生した火災について、調査を開始すると発表した。

ミシェル・ナジャール運輸相代理は、今回の火災の発生場所は、先月4日に倉庫に保管されていた硝酸アンモニウム2750トンに火が付き、大規模な爆発が発生した地点からは「遠い」と説明している。先月の爆発では190人が死亡し、6500人以上が負傷した他、ベイルートの街が広範囲に渡って破壊された。

ナジャールの説明によると、これまでの調査では今回の火災は通常のメンテ作業によって発生したと見られている。先月の爆発についても、同様の原因だったとする見方が強い。

今回の火災はすでに鎮圧されたとみられる。しかし先月の大爆発でベイルートの住民はいまだに緊張状態にあり、次の爆発に備えて窓を閉めて有毒な煙を避けるべきか、衝撃波で割れるガラス片を避けるために開け放しておくべきか、逡巡している有り様だった。

レバノン国民の政府不信が増幅

ベイルートの港では先週、港の入り口近くでコンテナ4個分、4.8トンの硝酸アンモニウムをレバノン軍が新たに発見したばかり。

レバノンでは、長らく問題視されてきたインフラ設備の改善が進まず、新型コロナウイルスによって拍車がかかる経済危機もあって政府への不信が高まってきたが、先月の爆発への対応で政府に対する国民の不満はさらに増幅していた。

一方で国外からの脅威もくすぶっている。

ベイルート港で消防が火災と格闘するさなか、レバノン軍は南部のイスラエル国境に近い村アイタ・アル・シャーブ上空でイスラエルのドローンを撃墜したと発表した。

イスラエル軍も直後にこの事実を認め、「レバノン国境で作戦行動中だったイスラエル軍のグライダー式ドローンが、レバノン領内に墜落した」と声明を出した。「これによる情報流出の恐れはない」

<参考記事>【レバノン大爆発】日頃の戦争を上回る最大の悲劇に団結する中東諸国
<参考記事>ゴーン逃亡のレバノンが無政府状態に、銀行も襲撃される

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税の即刻見直しかなわないなら、合意は困難=日米交

ワールド

トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措置示

ワールド

中国、ブラジル産鶏肉の輸入全面禁止 鳥インフル発生

ビジネス

マクロ系ヘッジファンドへの関心高まる、市場の変動に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中