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2020米大統領選

共和党大会はトランプの危うい政治ショー 稀代のナルシシストが再選されたとき何が起こるのか

Farcical Show with Frightening Implications

2020年9月4日(金)15時50分
フィリップ・ゴードン(米外交問題評議会シニアフェロー)

NATOの同盟国はアメリカがグローバルな難題(コロナ対策もその1つだ)に立ち向かうために協力体制を組むべきパートナーだが、党大会ではその重要性が語られるどころか、長年アメリカの軍事力に「タダ乗り」してきたとたたかれるばかりだった。

歴代大統領候補は沈黙

一方で、演説者たちは口々にトランプのおかげでアメリカは世界からますます尊敬されるようになったと自画自賛した。アメリカの指導力に対する国際社会の信認がかつてなく低下し、同盟国ですらトランプを全く信頼していない状況で、一体どの口がそう言うのかとあきれるほかない。

誰も表立っては言わなかったが、共和党の外交政策が完全にトランプに乗っ取られたこともこの大会で明らかになった。党大会で党の政策が発表されず、「大統領の掲げるアメリカ・ファーストを全面的に支持する」と宣言されるのはまさに異常事態だ。

歴代の共和党の大統領候補は今回、一人も演説を行わなかった。全員辞退したのかもしれない。実際、歴代の共和党政権で安全保障を担当した70人超の高官が公然と民主党候補バイデンの支持を表明している。

トランプ政権の最初の1、2年は、政権内の「大人」と呼ばれていた元軍人らがトランプの暴走をある程度抑えていた。彼らは皆政権を去り、今も残って外交政策を取り仕切っているのはトランプにこびへつらうポンペオとマイク・ペンス副大統領だけだ。

この大会から分かるのは、共和党の次期政権の外交政策はトランプのその時々の気まぐれで決まり、いきなり方向転換しても共和党は全面的に支持する、ということだ。

だからこそ2期目のトランプ政権は危険極まりない。その理由はトランプの外交能力がお粗末なことだけではないし、トランプが気候変動などの重要課題を無視することだけでもない。国務省などの政府機関から優秀な人材を排除したためだけでもない。

何より恐ろしいのは、再選されたトランプが「自分の流儀は信認された」と考えることだ。アメリカの有権者は、節操なきナルシシストが合法性や良識、国益などお構いなしに、やりたい放題に振る舞うのを認めたことになる。

共和党を乗っ取り、法や規範を無視し、独裁支配や人権侵害を容認して国際機関を骨抜きにし、アメリカを孤立させ同盟国を侮辱した揚げ句に再選されたら、トランプは今までのやり方を続けるか、もっとひどい暴走をするだろう。

党大会では誰もそう言わなかったが、図らずもそれが彼らのメッセージとなった。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年9月8日号掲載>

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