最新記事

ブレグジット

イギリス政府、離脱協定無効化法案の撤回を拒否 EUは法的措置も

2020年9月11日(金)10時49分

欧州連合(EU)は10日、英国に対し、EU離脱協定をの一部条項を実質的に無効化する「国内市場法案」を直ちに撤回するよう求めた。写真は英首相官邸前で英国旗を掲げる市民。9日撮影(2020年 ロイター/HENRY NICHOLLS)

欧州連合(EU)は10日、英国に対し、EU離脱協定をの一部条項を実質的に無効化する「国内市場法案」を直ちに撤回するよう求めた。ジョンソン英政権はこれを拒否し、計画を進める姿勢を示した。

欧州委員会は、英政府が法案を推し進めた場合、昨年合意した離脱協定に「極めて重大な違反」になると警告した。

欧州委のセフコビッチ副委員長と英国の離脱担当責任者であるゴーブ内閣府担当相との緊急会談後、EUは英側の提案が「信頼を著しく傷つけた」とし、修復措置を講じるべきだと述べた。

これに対し、英政府は法律意見書で「英議会は国内法を巡る問題における主権者で、条約上の義務に違反する法案を可決できる。そうした法律を制定する場合、議会の行動は違憲にならない」と指摘した。

ゴーブ担当相は「(法案の撤回は)できないし、そうするつもりもないことをセフコビッチ氏に説明した」と述べた。

EU外交官や当局者は、年内の離脱移行期間内に問題は解決しないだろうとし、EUが離脱協定を理由に法的措置を取る可能性もあると述べた。

ルドリアン仏外相は、ラーブ英外相に対し、離脱協定違反は「容認できない」と伝えたという。

こうした混乱を受け、英ポンドは対ドルと対ユーロで下落。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、交渉の行方を注視していると述べた。

EUのバルニエ首席交渉官は英国の姿勢を批判した上で、双方に大きな溝があると指摘。「英国はEUの基本的な原則と利益について互恵的な方法で関与していない」とし、「EUは起こり得る全てのシナリオに向けて準備を急いでいる」と表明した。

英国側の交渉責任者であるフロスト氏は、来週もブリュッセルで協議があり、合意に向けて取り組むとした上で「困難な分野がいくつも残っており、なお隔たりが大きい分野もある」とした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中