最新記事

イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界

イアン・ブレマーと旧知のサム、だから実現したアフターコロナ特集の舞台裏

2020年9月1日(火)18時00分
前川祐補(本誌記者)

――対談では日本についても多くを言及してもらった。率直に言って、日本人には見えていないが、ブレマーが気付いていることはどのようなものがあるだろうか?

ポトリッキオ:なぜユーラシアグループのウェブサイトに日本語サイトがあり、なぜブレマーがGゼロサミットを日本で運営するのか。それには理由がある。このパンデミック(感染症の世界的大流行)が日本の国際的地位に及ぼす影響について、ブレマーは多くの視点を与えてくれた(が、おそらく日本人は気付いていない)。これに対するニューズウィーク日本版の読者反応がとても楽しみだ。

――Gゼロの概念を始め、ブレマーの見識には一貫性がある。彼が正鵠を射抜けるのはなぜだろう。

ポトリッキオ:ブレマーが率いるユーラシアグループは「政治ファースト」を徹底している。私がブレマーと初めて話をしたとき、このスローガンについて尋ねたことがある。顧客への奉仕こそが最優先ではないのかと思ったからだ。

彼は真剣かつ好奇心旺盛な政治科学者だ。世界秩序がどのように運営されているか、その科学的側面に焦点を当てることによってのみ、顧客が必要とする情報を与えることが出来ると考えている。ブレマーは地政学リスク分析という分野を発明した。その活動を支えるため、精緻で厳格な政治分析を日々行っている。

――リーダーシップの専門家として、ブレマーが対談で示した将来の指導者象、あるいは世界的課題を解決する方策についての感想を教えて欲しい。

ポトリッキオ:ブレマーのツイッターには、4年近くもピン止めされているツイートがある(おそらく、どんなセレブたちがピン止めしているツイートよりも長い期間)。

それは、異論を歓迎するという内容だ。彼はこうツイートしている。「もしあなたが嫌いな人のツイッターをフォローしていなければ、それは間違っている」。ブレマーは、自身と意見が合わない人の考えがブレンドされていく過程を好む。世界をよりクリアに見通すためには、意見が大きく異なる人たちとの非常に濃密な「バトル」が不可欠だと思う。

彼のことをインテリ論争を好む人物と言い切ることは簡単だが、ブレマーは正しい主張を得るために、恒常的に自身の科学的分析と直感を挑戦にさらしている。その意味で、ただのインテリではない。

私たちは世界的な課題を解決するために、解決方法の視野を広げなければならない。ブレマーは、彼の世界観に対するチャレンジを寛大に受け止めてくれるだろう。この対談で彼が語った内容について、ニューズウィーク日本版の読者から異論が噴出することを楽しみにしている。そうなればきっと、世界的課題を克服するための、大きな風穴が空くに違いないから。

20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 6
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中