最新記事

感染症対策

WHO、コロナワクチンへ高まる期待をけん制「正常化への道のり長い」

2020年8月4日(火)11時15分

世界保健機関(WHO)は3日、新型コロナウイルスに対する完璧なワクチンという「特効薬」が開発されることは永久にない可能性があり、正常化への道のりは長いと述べた。一部の国は新型コロナ対策を改める必要があると指摘した。写真はイメージ。4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

世界保健機関(WHO)は3日、新型コロナウイルスに対する完璧なワクチンという「特効薬」が開発されることは永久にない可能性があり、正常化への道のりは長いと述べた。一部の国は新型コロナ対策を改める必要があると指摘した。

ロイターの計算によると新型コロナの世界の感染件数は1814万人を超えている。死者数は68万8080人。新型コロナ感染のピークが過ぎたと捉えていた国の中には再び感染件数が増えているところもある。

WHOのテドロス事務局長と緊急事態対応の責任者マイク・ライアン氏は、マスクの着用やソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)、手洗い、検査などの衛生対策を積極的に強化するように促した。

テドロス事務局長は、ジュネーブにあるWHO本部でオンライン形式の記者会見を開き「人々や政府に対するメッセージは明確だ。『すべて実行するのだ』」と述べた。マスクは世界の結束を象徴するものとなるべきだと付け加えた。「多くのワクチンが第3相臨床試験の段階にあり、感染予防対策として効果的なワクチンが多く出てくることをみな望んでいる。

ただ、現時点で特効薬はない。今後もないかもしれない」と話した。新型コロナは公衆衛生に関する20世紀初め以降で最大の緊急事態であると同時に、ワクチン開発に向けた世界の競争もまた「前代未聞だ」と語った。

先行き不透明感も強調した。「効果的なワクチンが開発されないことへの不安がある。開発されても数カ月ほどの限定的な効果であるとの不安もある。臨床試験が終わるまでは分からない」とした。

ライアン氏は、ブラジルやインドなど感染率が高い国は大きな闘いに備えるべきだと述べた。「出口までは長い。長期間頑張る必要がある」とし、一部の地域で対策を「改める」ことを促した。「一歩下がって国内のパンデミック対策をじっくり検証する必要がある」と述べた。

米政権の新型コロナの専門家は米国が「新たな段階に入った」としてる。米国の感染拡大について質問されたライアン氏は、米当局が「正しい道のり」を示したようであり、それはわれわれの仕事ではないと答えた。

テドロス氏はウイルスの起源を調べるために中国に派遣していた専門家が任務を終えたことを明らかにした。今後実施するさらなる調査に向けての準備についても語った。調査は、資金の最大拠出国である米国が求めたものの一つだ。米国はWHOが中国寄りだと強く批判し、2021年にWHOを脱退する予定だ。

今後は、中国やその他の国の専門家からなるWHOを中核としたチームをつくり、湖北省武漢市などで調査に乗り出す。時期やチーム構成はまだ明らかでない。ライアン氏は中国が既にいくらかの情報を提供していると述べた上で、知識の差は残っていると指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・ロシア国立研究所、コロナワクチンの臨床試験が終了 10月から接種開始へ
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のミサイル防衛システムへの関与で調査要請=

ビジネス

丸紅、自社株買いを拡大 上限700億円・期間は26

ワールド

ウクライナ協議の早期進展必要、当事国の立場まだ遠い

ワールド

中国が通商交渉望んでいる、近いうちに協議=米国務長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中