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習近平訪韓予定の狙いはむしろ日本

2020年8月26日(水)20時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

ステーブルコインとは「安定した価格を実現するように設計されたデジタル通貨」で、「提案」は「人民元、日本円、韓国ウォン、香港ドル」により構成されるバスケットに裏付けられたステーブルコインを(反対が少ないように)民間主導で形成し、中国の中央銀行およびその関連監督管理機関による監督管理下にあるサンドボックスでクロスボーダー取引を開始してみる」というのが骨子だ。

サンドボックスというのは「砂場、砂箱」のことで「ソフトウェアの特殊な実行環境として用意された、外部へのアクセスが厳しく制限された領域」のことを指す。

このような「提案」の場合、必ず背後には中国政府があり、習近平政権の意向がある。「提案」は「中日韓港」(港:香港)ステーブルコインを中心に行われているが、前掲の孫教授は「だから中国政府は中日韓自由貿易協定を急いでいる」と強調した。

習近平の狙いは、法定デジタル人民元の実現によって、いつかはアメリカを金融界において凌駕することで、そのために「一帯一路」やアフリカの「信用格付け」さえされていないような国に投資する。西側諸国はそれを「債務の罠」と呼ぶが、実は自国の信用できる貨幣や金融機関さえないような国は、やがて「デジタル人民元の方が信用できて便利だ」と思うようになるかもしれない。習近平の狙いはそこにある。

国連人権理事会における香港国安法賛成国が反対国の2倍に上るのは、この狙いが現実になりつつあることを物語っている。

ここで韓国を説得すれば、香港における「中日韓港」デジタル通貨の実験に成功するかもしれない。そのためには日本を誘い込まなければならないのである。

安倍首相は今になってもなお、習近平の国賓来日を中止するとは宣言していない。それどころか自民党の二階幹事長は習近平国賓来日を絶対に実現すべきだと今も主張している。そしてポスト安倍を狙う政治家は、二階幹事長に取り入って、同じく習近平国賓来日を絶賛するという体たらくだ。習近平訪韓予定の目的を「米韓離間」などと言っている場合ではない。

狙いは日中韓自由貿易協定の早期実現であり、墜とそうとしている相手国は日本なのである。

それでもなお、日本の政治家は目覚めないのか。そのことを憂う。

(詳細は白井一成氏との共著『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。


中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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