最新記事

中国

習近平訪韓予定の狙いはむしろ日本

2020年8月26日(水)20時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

北京での中韓首脳会談(2017年) REUTERS/Nicolas Asfouri

訪韓の狙いには香港問題などが大きく、実はそこに日本が絡んでいる。米韓離間は既にほぼ実現しており、中国は日韓の離間を喜んでいる。日中韓自由貿易協定を進めてデジタル人民元の実現を遠くに睨んでいるからだ。

米韓離間はほぼ実現

中国が長いこと狙ってきた「米韓離間」は文在寅政権が誕生してからほぼ実現しており、今さら注目する話ではない。

たとえば2017年6月8日のコラム「韓国を飲み込んだ中国――THAAD追加配備中断」や2018年8月1日のコラム「遂に正体を表した習近平――南北朝鮮をコントロール」あるいは2019年8月26日のコラム<「中露朝」のシナリオに乗った韓国のGSOMIA破棄>などに書いてきたように、米韓離間という習近平政権の狙いは早くから実現しつつあるのだ。

米韓間に隙間ができたため、トランプ大統領などは2019年8月24日からフランスで開催されたG7(先進7ヵ国)サミットで「文在寅大統領は信用できない」と批判し、「金正恩委員長が『文大統領は嘘をつく人だ』と言った」と暴露するなど、公けの席で韓国の大統領を蔑視することさえ見られるようになった(参照:2019年8月27日のコラム<嘘つき大統領に「汚れ役」首相――中国にも嫌われる韓国>)。

したがって、今さら米韓間に楔を打つのが目的というような話ではない。

習近平国家主席の訪韓は、文在寅政権誕生後に何度も提唱されたが、ここに来てようやく機が熟したということになろう。

国連人権理事会で香港国安法の賛否表明を棄権したシンガポールと韓国

むしろ注目すべきは、習近平国家主席訪韓の赤絨毯を敷きに行った中国外交トップの楊潔チ氏(中共中央政治局委員)が、訪韓前にシンガポールを訪問していることだ。

楊潔チ氏がシンガポールのリー・シェンロン首相に「新型コロナウイルス感染症の猛威に直面し、双方は互いに見守って助け合い、産業チェーンとサプライチェーンの安定的な流れを保障し、新型コロナ対応での協力を着実に進めている。今年は中国シンガポール国交樹立30周年に当たり、両国関係は新しい歴史の出発点に立つ」と言ったのに対し、リー首相は「シンガポールは中国とのハイレベル往来を緊密化させ、二国間の協力メカニズムを生かして、アセアン・中国関係の発展を推進していきたい」と応じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アルゼンチン大統領、改革支持訴え 中間選挙与党勝利

ワールド

メキシコ、米との交渉期限「数週間延長」 懸案解決に

ビジネス

米クアルコム、データセンター向けAIチップ発表 株

ワールド

ロシア、ウクライナ東部で攻勢 ドネツク州の要衝ポク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中