最新記事

中国

習近平訪韓予定の狙いはむしろ日本

2020年8月26日(水)20時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

なぜシンガポールを重視したかと言うと、一つには香港国家安全維持法(香港国安法)実施以降、多くの在香港投資家がシンガポールに根拠地を移転しているからだが、もう一つには国際社会における香港国安法への意思表明があるからだ。

6月30日にスイスのジュネーブで開催された国連人権理事会で香港国安法に対して「反対27ヵ国」と「賛成53ヵ国」の共同声明が発表されたのだが、シンガポールや韓国など数カ国は「反対」でもなく「賛成」でもなく、意思表明をすることを棄権している。

アメリカは2018年に国連人権理事会を脱退しており、反対を表明した国はアメリカを除くG7をはじめ、民主的価値観を抱く西側諸国が多い。もっとも、イタリアは習近平政権が唱える「一帯一路」に参加することを表明しており、また中国が3月11日から始めた医療支援である、いわゆる「マスク外交」の最初の対象国であったことから、「反対27ヵ国」の中には入っていない。したがってG7からはアメリカとイタリアが抜けているので、5ヵ国でしかなく、国際社会におけるG7の重みのなさを如実に表している。

一方、賛成した53ヵ国のうち、47ヵ国(88.8%)は「一帯一路」参加国であることを考えると、いかに中国の戦略が危険な効果を発揮しているかをうかがわせる。

特に今年6月7日、中国の国務院新聞弁公室はコロナに関する「中国行動」白書を発表し、「一帯一路」沿線国の内、発展途上国および貧困国に対する債務を暫時減免すると宣言した。

また6月17日にはリモートでアフリカ53ヵ国との間の首脳サミットを開催し、そこでも発展途上国と貧困国に対する債務の減免を宣言した。

そのような中で中国を敵に回して反対表明をするのは難しい。

韓国やシンガポールなどはその支援の対象ではないが、それでも「中立」を保っているのは、中国にとって好ましいことではない。

7月31日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等17の人権NGOは、「香港・国家安全維持法の拒否を求める世界的な呼びかけ」を行なった。

呼びかけた国は40か国の政府(欧州連合の27の加盟国すべて、オーストラリア、カナダ、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、韓国、スリランカ、タイ、イギリス)で、このうち「シンガポール、韓国」はインドやインドネシア、フィリピンなどと共に意思表明を棄権しているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

米特使、イスラエルでネタニヤフ首相と会談へ=イスラ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に

ビジネス

英製造業PMI、1月は51.8に上昇 24年8月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 9
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中