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タイ

聖域「王室」にも迫る タブーに挑むタイ若者の民主活動

2020年8月17日(月)11時46分

民主化活動に急速な変化

アノン氏が公然と王室改革を求めたことは、タイの民主化活動に大規模かつ急速な変化が生じていることを裏付けている。新世代の抗議参加者の一部は王室と軍の緊密な関係に結びついた体制を攻撃する。陸軍将校の経歴を持つ現国王は、形のうえではタイ国軍の最高指揮官である。

「これこそ人々が話題にしたがっている問題だ」と語るのは、マハナコン大学で工学を学ぶパトサラワリー・タナキットウィブンポンさん(24)。3日の抗議行動の計画に参加し、スピーチもした。「あまりにも長い間、この問題は姑息に隠蔽されてきた。だから我々は、この問題について理性的かつオープンに語る方がいいだろうと考えている」

一連の抗議行動は、初めのうちはオンラインで計画され、主として大学のキャンパスで行われる平和的で小規模の「フラッシュモブ」的行動だったが、最近ではタイ全国で街頭デモが多数行われ、オンラインでも数百万ものユーザーが「#FreeYouth」といったハッシュタグをフォローしている。

これまでのところ、当局からの反応は限定的である。

アノン氏のスピーチが行われた翌日の8月4日、プラユット・チャンオチャ首相は記者団に対し、政府は学生たちへの説得に前向きであると述べた。同首相は7月15日、国王が不敬罪法に基づく訴追を行わないよう求めたことを明らかにしている。

だが、軍トップのアピラト・コングソンポン氏はそれほど融和的ではなかった。8月5日、士官候補生らに対する演説のなかで、アピラト氏は「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は治せる病だ。しかし国を憎む、自分自身の祖国を憎むという病は治しようがない」と述べた。

警察は7日の発表のなかで、7月18日に行われた抗議行動に対する苦情を受けたことを理由にアノン氏ともう1人の主催者を逮捕し、取り調べを進めていると述べている。アノン氏が8月3日の抗議行動におけるスピーチに関して、不敬罪法に基づく告発を受けていない理由について、警察は説明していない。


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