最新記事

韓国

文在寅大統領「8・15演説」、日本との対話を強調 その事情とは......

2020年8月18日(火)18時40分
佐々木和義

文在寅大統領の退陣を求める集会も

例年の8月15日、ソウル・光化門広場を中心に大規模な反日集会が開かれてきた。ボイコットジャパン旋風が巻き起こった2019年8月15日、その光化門広場で文在寅大統領の退陣を求める集会が行われた。

慰安婦支援を標榜する正義記憶連帯が旧日本大使館前で主催した反日集会は、主催者発表2万人が集まったが、はるかに上回る5万人(主催者発表5万人、警察発表4万人)が文在寅大統領の退陣を求めた。

保守系団体は今年の光復節も文在寅大統領の退陣を求める集会を計画した。26の保守系団体が申告した参加予定者は昨年を大きく上回る12万人に達したが、ソウル市が待ったをかけた。新型コロナウイルスの集団感染が確認されたのだ。

ソウル市は13日、集会禁止命令を発令し、強行する団体に罰金を科すと通知した。ソウル市と警察は、8月15日、光化門広場にバリケードを設置し、大規模集会のたびに参加者が陣取る世宗会館の入り口を封鎖した。

保守系団体は集会を中止すると公式発表した一方、集会が行われるという噂を流し、多くの人が広場を目指した。地下鉄駅は通勤ラッシュを超える混雑となり、周辺道路は遠方の参加者を乗せた十数台の貸切バスが列を成した。

一部で参加者と警察の小競り合いがあったが、全国の高校や中学の校旗が並べられた場所では、記念写真を撮る同窓生の姿が見られ、広場に隣接するカフェや駅近くで販売していたヤクルト、国旗を販売する屋台に向かう人々の姿があった。

_IMN3669.jpg

撮影:佐々木和義


_IMN3667.jpg

撮影:佐々木和義


広場周辺が人々で溢れかえり身動きが取れなくなると、警察はバリケードを一部解除したが、雨足が強まって建物の軒下や駅に避難するなど、まとまりがない集まりに終始した。

今年の光復節は大きな混乱はなく、また、成果もなかった

一方の反日団体も大規模集会を開催することはなかった。韓国検察が、例年、大規模な反日集会を主導してきた正義記憶連帯の前理事長で実質的代表である尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員を足止めしたのだ。検察は13日午後、不正会計の容疑で尹美香氏に出頭を命じ、14日未明まで14時間半に渡って取り調べを行った。

韓国のデモや集会は時として暴動に向かうが、ソウル市、警察、検察の連携で、20年の光復節は大きな混乱はなく、また、成果もないまま幕を閉じた。光復節翌日の8月16日、ソウルで141人の新型コロナウイルス感染者が確認され、韓国政府は首都圏の防疫レベルを引き上げた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中