最新記事

感染第2波

韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か

2020年8月21日(金)17時16分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国に感染第2波をもたらしたサラン第一教会のチョン・グァンフン牧師が、文在寅政権糾弾デモ集会で演説した。MBCNEWS / YouTube

<アンチ文在寅を叫び、コロナは外部からのバイオテロだと叫ぶ教団が、韓国を再びコロナ禍に突き落とした>

世界的な新型コロナのパンデミックからもうすぐ半年近くになるが、感染拡大が始まった頃に比べ、気の緩みが見え始めた頃に起こるのが感染第2波だ。日本でも7月からまた徐々に感染者数が増加し心配されているが、お隣の国・韓国でも先週からついに第2波到来かと危惧されている。

韓国は初期の見事な抑え込みが話題となり、4月19日にはひと桁台を記録、その後も全国の感染者が30~50人前後に落ち着き、このまま終息に向かっていくのかと思われていた。ところが、先週8月13日には103名と3ケタ台になり、8月18日には297名と急速に感染が拡大し始めている。

感染第2波も宗教団体がクラスターに

そもそも韓国で初期に急速に感染が始まったのは、新天地イエス教団のクラスターが原因だったと言われている。そして、今回の第2波感染拡大も、なんと同じく宗教団体でのクラスターから発生した。

今回、集団感染が発覚したのは「サラン第一教会」だ。1983年にチョン・グァンフン牧師によってソウル市城北区に創立され、登録信者は約3000〜4000人と言われている。

一見、韓国の街でよく見かけるプロテスタント系の教会のように見えるが、実は極右的政治団体の一面も持ちあわせている。2000年中盤頃からデモ集会に積極的に参加するようになり、昨年10月には、大統領官邸である青瓦台の前で行われたデモ集会で、チョン牧師が「神を馬鹿にする者は、私が死に陥れる」という言葉を発し、キリスト教界で神聖冒涜や異端議論が提起されていた。

コロナウイルスに対しても独特な考えを持っており、「コロナは外部からのバイオテロによるものだ。負けてはいけない」などと布教している。

テロ組織のように周到に用意してデモを決行

さらにチョン牧師は、政府や警察の集会禁止令を無視し、8月15日の光復節に文在寅政権糾弾デモ集会をソウル市中心部の光化門前広場で決行した。この集会でクラスターが発生し、感染をさらに拡大したのではないかとみられている。

デモから2日後、チョン牧師は陽性が確認され、信者やデモ参加者の感染も次々と発覚している。保健所は、まだ検査を受けていない信者に検査を受診するよう要請しているが拒否する者が多い。

また韓国メディアによると、デモ集会前後には「クレジットカードの使用を禁止し、GPSでの追跡を逃れるため携帯電話の電源を切っておくように」と、信者同士で注意喚起のやり取りが行われており、足取りがつかみにくくなっているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった...「ジャンクフードは食べてもよい」
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中