最新記事

感染症対策

新型コロナ対策でトランプ政権内の亀裂深化、会見再開も対立の種

2020年7月27日(月)11時16分

米ホワイトハウス内部で、新型コロナウイルス感染の大流行への対処方法を巡る意見の相違が、内輪もめと緊張に拍車を掛けている。写真は国立アレルギー研究所のファウチ所長(左)、新型コロナ対策チームのバークス調整官(左から2番目)。ホワイトハウスで4月22日撮影(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

米ホワイトハウス内部で、新型コロナウイルス感染の大流行への対処方法を巡る意見の相違が、内輪もめと緊張に拍車を掛けている。新型コロナ死者数が増加しトランプ大統領の支持率が下がっているにもかかわらず、そうした事態が問題への取り組みを妨げている。

政権関係者によると、政権の新型コロナ対策チームの医師ら、とりわけ特にバークス調整官は、感染拡大についての警告が無視されていることにいら立ち、さらに、国立アレルギー研究所の高名な感染症専門家であるファウチ所長が面目をつぶされて、名誉を傷つけられていることに動揺している。

トランプ大統領はこのほど、戦略変更の合図を送り始めた。トランプ氏が米大統領選挙の民主党候補指名を確実にしているバイデン前米副大統領に支持率調査で差を広げられているのは、大部分が大統領の新型コロナ対応に有権者が不満なためだ。

これまで何か月も公的な場でマスク着用を渋ってきたトランプ氏だったが、20日、ツイッターにマスク姿の写真を投稿し、さらに新型コロナについての定例会見を再開するつもりだと表明した。

21日に開いた再開第1号の会見では、他人との距離を保てないときはマスクを着用してほしいと国民に呼び掛けた。「マスクを好きでも嫌いでも、マスクは効果がある。われわれはできることは何でもやる必要がある」と語った。

定例会見再開を決定する前、政権内部では今年3月に大統領執務室を動かす実権を握ったメドウズ大統領首席補佐官と、その他のメンバー、特にペンス副大統領のチームとの間で、国民に新型コロナ関連の情報を発信する戦略での激しい対立があった。

メドウズ氏は対策チームの会見の抑制を主張した。その結果、会見はホワイトハウスでは行われなくなり、開催もごくたまになり、大統領も参加しなくなった。トランプ氏が経済再開や再選への取り組みを強めることに専念しようとする中、「話題」を新型コロナから変える必要があったからだ。

トランプ氏は4月下旬までは新型コロナで定例会見をしていたが、治療には消毒液の注射が有効だなどとした一連の発言の失敗を受け、中断していた。

しかしトランプ氏が今回再開を決めたのは、コンウェイ大統領顧問から大統領の支持率は春に定例会見をしていたころの方が高かったとの指摘を受けたことや、ミラー選対幹部の後押しもあった。政権内の他の高官も再開に賛成した。ある高官は、政権内に意見の相違があったことを念頭に「今は全員一致している」と述べて見せた。

しかし、関係者らによると、各州の経済再開指針を策定してきた医師らは現状の感染者数の増大に懸念を強めている。自分たちの助言が留意されないことにいらだつ向きもあるという。

消息筋によると、バークス調整官は最近、テキサス、ニューメキシコ。アリゾナ、フロリダ、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、ジョージア、さらにはサウスカロライナの各州を回った。このうちの数州は今や感染の一大流行地になっている。訪問した州の多くは彼女の提言した指針を導入したはずの州だ。

医師らはまた、ファウチ所長に対する扱いぶりにうろたえている。ファウチ氏はトランプ氏やメドウズ氏やナバロ大統領補佐官を含むホワイトハウス首脳陣から激しく攻撃されている。対策チームのある高官は「われわれは米国の公衆衛生のため最善を尽くそうとしているだけだ」と語り、「ファウチ氏の身に起きていることは、ショックだという以外に表現が浮かばない」と訴える。

トランプ氏の21日の会見に同席する医師の姿はまったくなかった。

関係者によると、マスク問題の扱いを巡っては、カドロー国家経済会議委員長が着用を強く提唱した。トランプ大統領の長女イバンカ大統領補佐官やメラニア大統領夫人も着用を擁護しているとされる。

しかし、政権内の最大の意見対立はつまるところ、メドウズ氏の仲間と、コロナ対策チームを監督するペンス副大統領の周囲との確執にある。関係者によると、メドウズ氏側は対策チームが行動を起こさないとしていら立っている。

対策チームは外部助言役としてメドウズ氏らも呼び、会合にオブザーバー参加させていたという。そのメドウズ氏側の不満ぶりに、別のホワイトハウスの関係者は「ばかげている」と一蹴した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・感染防止「総力挙げないとNYの二の舞」=東大・児玉氏
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、21日の新型コロナ新規感染230人程度 13日連続で100人以上続く
・インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体放置 謎だらけの事件にメディア騒然


20200728issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

イラン、CIAに停戦協議打診か イスラエルは米に説

ワールド

ハメネイ師息子モジタバ師、後継有力候補との情報 米

ビジネス

プーチン氏、欧州向けガス供給の即時停止の可能性を示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 8
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中