最新記事

米中対立

【南シナ海】ポンペオの中国領有権「違法」発言は米中衝突の狼煙か

The U.S. Declared China’s South China Sea Claims ‘Unlawful.’ Now What?

2020年7月15日(水)18時35分
コーム・クイン

今回の宣言は、南シナ海で既に確立されたアメリカの行動を促進するものだとクラスカは言う。

そこでクラスカが引き合いに出したのが「航行の自由」作戦だ。アメリカの船や航空機を紛争地域に送り、そこを通過する権利を示すことによって、中国の主張に挑戦するというやり方で、オバマ政権が開始したが、トランプ政権下でも続けられている。

実際、今年に入ってすでに4回も実施した。ポンペオの声明の翌日の7月14日にも、スプラトリー諸島の近くに誘導ミサイル駆逐艦を送り込んだ。オバマ政権が8年間で実施した航行の自由作戦は、わずか6回だった。

ポーリングにしてみれば、今回の宣言は、中国と対立するトランプ政権の政治的動機に基づくと共に、急速に変化する戦略的環境を反映している。

強大な海軍と、巨大で攻撃的な沿岸警備隊を擁する中国の海の軍事力を前に、小さな国々の活動はますます困難になっている、とポーリングは指摘する。

「南シナ海が中国の海になる可能性はそれほど低くない」と、ポーリングは言う。「だから、今、動かなければ、間に合わないかもしれない」

意図せざる衝突の火種

中国の行動が単なる「不安定化要因」から「違法」という表現に変わったことは、新疆ウイグル問題をめぐる中国の個人に科された制裁と同じように、制裁への扉を開く可能性があるとポーリングは言う。

CSISフォーラムで制裁について尋ねられたスティルウェルは、明言を避け、「あらゆることが検討されている」と答えた。

中国では、国営メディアの環球時報がその社説でポンペオの声明を「卑劣」と呼び、アメリカが声明を発表したことを「より多くの対立を扇動する前兆」と非難した。

「中国には海洋法に関する国際連合条約を含む国際法に基づいて、南シナ海に対する主権と管轄権を持っている。歴史的にも中国には南シナ海に権利がある」と社説は主張した。(ハーグの判決が明らかにしたように、どれも真実ではない)。

この海域をパトロールするアメリカ海軍の存在感が増したことは、米中対立のリスクを高めるが、紛争が起きる可能性は低い、とポーリングは言う。むしろ、小さなアジア諸国の船舶と中国の船舶との衝突が、アメリカとの相互防衛条約を発動し、思いがけず超大国同士の対決が起きる可能性が高い、と彼は見ている。

ポンペオは昨年、紛争の対象となっているスカボロー礁を明確にアメリカ・フィリピン防衛条約の範囲内と定めた。これによって、スカボロー礁が軍事衝突の火種となる危険が生じている。

「その可能性はゼロではない」と、ポーリングは言った。

(翻訳:栗原紀子)

From Foreign Policy Magazine

【話題の記事】
傲慢な中国は世界の嫌われ者
「中国はアメリカに勝てない」ジョセフ・ナイ教授が警告
中国は「第三次大戦を準備している」
【動画】集中豪雨により氾濫する長江

20200721issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月21日号(7月14日発売)は「台湾の力量」特集。コロナ対策で世界を驚かせ、中国の圧力に孤軍奮闘。外交・ITで存在感を増す台湾の実力と展望は? PLUS デジタル担当大臣オードリー・タンの真価。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国でパナマ籍船拿捕が急増、状況を注視=米連邦海事

ビジネス

ナフサ不足で医療機器が出荷困難の可能性、透析・手術

ビジネス

トヨタ、中国で56万台リコール 後部座席の不具合で

ビジネス

自然利子率の再推計値は-0.9%―+0.5% 24
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中