最新記事

香港国家安全維持法

国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

Citing Safety, Hong Kong Democracy Groups Close Facing China Security Law

2020年7月1日(水)17時15分
デービッド・ブレナン

「いまこのとき、世界各地の無数の人々が、香港を気にかけ、国家安全維持法のもとでの私個人の状況に対して注目していると確信している」とウォンは書いている。「私はこれからも、私の家である香港を守っていく。彼らが私を黙らせ、この地から消し去るまでは」

ローも、今後も戦い抜く意志を示した。「私が持つ力の限り、香港の民主主義と自由のために戦い続ける。友人たちよ、どうか気を強く持ってほしい。香港の人々はあきらめない」

チョウは、デモシストからの離脱は「避けられない決断」だったと心境を綴っている。チョウは民主活動家たちに対し、希望を失わないようにと呼びかけ、こう述べた。「生きている限り、希望はある」

ローとチョウは、6月に入って行われた本誌の取材に対し、たとえ国家安全維持法が成立しても、自分たちは香港を出るつもりはないと言っていた。しかし、香港にとどまり続ければ、2人は長期にわたる収監や、治安当局からの妨害行為に直面するおそれがある。

香港の中国からの独立を目指す政党、香港民族党も、30日に解散を表明した。同党はフェイスブックへの投稿で、今後は台湾とイギリスに置かれた海外支部が活動を引き継ぐと説明した。また、香港独立を掲げる団体である学生動源(スチューデント・ローカリズム)も、同様の措置をとると発表。台湾、アメリカ、オーストラリアに支部を立ち上げ、今後も活動を続ける意向を示した。

今回成立した国家安全維持法が、過去にさかのぼって適用されるのか、それとも成立後の違法行為にのみ適用されるのかは、今のところ不明だ。仮にさかのぼって適用されるのであれば、民主化運動活動家たちを一網打尽に捕らえ、2019年の民主化運動デモの際に逮捕された9000人以上にのぼる人々を起訴するために使われるおそれがある。

香港から選出されている全人代常務委員会メンバーの譚耀宗は、同法の適用対象について明言しなかったと、香港フリープレスは報じた。

「この法律が公式発表されるまで、まだ数時間あるはずだ」と、譚は記者たちに語った。「この法律の全文を読めば、誰もが知りたいことが明確になるはずだ。なぜなら、すべての犯罪行為が定義されているからだ」

成立した国家安全維持法は、国家分裂、政権転覆、外国勢力との結託を犯罪行為とみなし、刑事罰の対象とするものだ。反対派はこの法律について、香港における言論の自由や抗議活動を実質的に押しつぶすものだとして警告している。香港は、1997年までイギリスの植民地だった来歴がある。

【関連記事】「香港独立」の旗掲げた男を香港警察が逮捕 国家安全法違反で初
【関連記事】若者は資格なし? 英国民になれる香港人の条件とは

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:大火災後でも立法会選挙を強行する香港政府

ビジネス

リオ・ティント、コスト削減・生産性向上計画の概要を

ワールド

中国、東アジアの海域に多数の艦船集結 海上戦力を誇

ワールド

ロシアの凍結資産、EUが押収なら開戦事由に相当も=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中