最新記事

日本的経営

【IT企業幹部・厚切りジェイソン】アメリカの営業マンが外回りせずに2億円稼ぐ理由

WHY JAPANESE SALESPEOPLE!?

2020年7月21日(火)19時12分
藤田岳人(本誌記者)

PONSULAK/ISTOCK

<IT企業幹部でもあるお笑い芸人・厚切りジェイソンが語る日本とアメリカの営業手法の違い。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より>

新型コロナウイルスの流行によって、最も影響を受けた職種の1つは営業職だろう。日本では人と人との関係づくりが重要とされ、顧客と対面での売り込みが基本となってきたからだ。だが、こうした慣習は世界共通のものなのか。

お笑い芸人の厚切りジェイソンは、IT業界で働くビジネスマンというもう1つの顔を持つ。アメリカの大学在学中にインターンとして日本企業で働いた後、アメリカに戻ってソフトプログラムの技術者として就職。さらにはクラウドコンピューティングの業界に移り、現在はベンチャー企業への投資・育成事業を行う企業の役員を務めている。

その中で多くの日米企業と関わり、技術者や投資家の立場から営業をする側・される側の両方を経験してきた彼に、日米の「営業」の違いを本誌・藤田岳人が聞いた。

20200728issue_cover200.jpg

――日米で、営業活動の手法に違いはあると思うか。
自分の経験から感じたことしか言えないが、アメリカは人よりもモノを重視する。これを使えばこれだけ業績が伸びるとデータで証明できれば営業の方法に関係なく売れるし、モノが悪ければどんなによい営業マンでも売れない。日本はモノより人が大事で、よいモノでも信頼している営業マンからでなければ買わないし、逆の場合もあり得る。

アメリカは企業同士の競争が激しく、最先端のよいモノを競合より先に使わなければ生き残れないという意識があるからだと思う。また日本は最先端のモノについて、まずは他社が使うまで待って、状況を見てから自社も導入するかを検討する印象がある。アメリカで成果を出していたクラウドサービスを自分が日本で紹介したときも、日系企業は「うちはまだちょっと」という反応で、1件も売れなかった。

――日本企業は新しいものの受け入れに抵抗があるのか。
例えばクラウドの売り込みでも、アメリカ企業ではウェブサイトにログインするだけで使える形態のものを、標準の仕様で使おうとする企業が多かった。導入に時間もコストもかからないし、サービスのメリットを全て受けることができる。それを使うことで、何ができるかを一から考えるという発想だった。

日本の場合、クラウドを使って自社がこれまでやってきたことをどう再現するかという考え方だった。そのため細かくカスタマイズすることも求められたが、そうするとメリットが消えるので、結局は魅力的に見てもらえなかった。

――まずは自社のやり方が最優先されるということか。
それは日米の社員教育の違いにも表れていると思う。アメリカは即戦力を求め、新入社員が大学で専攻したものをすぐ生かそうと考える。日本では会社のやり方があるので、どんな専門分野であっても一から教え直す。会社の文化を大事にする印象がある。

もちろんこれには、社内の団結力が強まるなどよい面もある。アメリカでは会社の業績が落ちたり、1円でも高い給料を提示されたりすれば、すぐ競合他社に転職する。

【関連記事】知られざる日本のコロナ対策「成功」要因──介護施設
【関連記事】「最強の時短仕事術」で、毎朝やるべき1つのこと

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米雇用悪化を警戒

ビジネス

米国株式市場=ダウ最高値更新、559ドル高 政府再

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中