最新記事

格差

新型コロナウイルスの人種格差は、思っている以上に大きかった

2020年6月19日(金)17時30分
松岡由希子

ニューヨークで抗議活動に参加する人々 ...... REUTERS/Eduardo Munoz

<米ブルッキングス研究所がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)発表のデータを元に、人種別の感染者数、死亡者数を分析した ......>

新型コロナウイルス感染症の感染者数とこれによる死亡者数が世界最多となっている米国では、白人よりも、黒人をはじめとするマイノリティ(社会的少数者)に、深刻な影響をもたらしている。

たとえば、黒人の人口比率が30%のシカゴでは、新型コロナウイルス感染症による死亡者の60%を黒人が占めている。ニューヨークでは、黒人の人口比率が18%であるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の入院患者の3人に1人が黒人だ。

黒人やラテン・ヒスパニック系の死亡率は白人の6倍以上

米ブブルッキングス研究所では、2020年2月1日から6月6日までにアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表したデータを元に、人種別の感染者数、死亡者数を分析。すべての年齢層において、黒人やラテン・ヒスパニック系のほうが、白人に比べて、新型コロナウイルス感染症による死亡率が高くなっていることを明らかにした。

これによると、55歳から64歳までの黒人の死亡率は65歳から74歳までの白人よりも高く、65歳から74歳までの黒人の死亡率は75歳から84歳までの白人よりも高い。なお、ラテン・ヒスパニック系の死亡率は、白人と黒人の中間であった。

image-25.pngCOVID-19の年齢別および人種別の死亡率 100,000人あたり


年齢層別の死亡率の格差は、より若い年齢層で顕著であった。45歳から54歳までの白人の人口比率は62%であるが、この年齢層の死亡者のうち、白人の割合は22%にとどまった。黒人やラテン・ヒスパニック系の死亡率は白人の6倍以上にのぼる。

image-26.pngCOVID-19の死亡率、特に中年期の人種差


同様の傾向は、英国でも確認されている。黒人、アジア人、少数民族(BAME)の人口比率は14.5%であるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症患者の34%をBAMEが占めている。

感染リスクの高い職業、基礎疾患、密集した集合住宅 ......

雇用や住宅、教育、健康など、様々な面で、黒人をはじめとするマイノリティへの社会経済的不平等が、新型コロナウイルスへの感染リスクや重症化リスクを高める要因となっている。感染リスクの高い職業に従事し、密集した集合住宅で生活していることなどから、新型コロナウイルスにより感染しやすくなる。

また、医療へのアクセスが乏しいことや、高血圧や肥満、糖尿病などの基礎疾患により、重症化リスクも高まる。

米バージニア大学法科大学院のデイナ・ボウウェン・マシュー教授は、「医療格差によってマイノリティの人々が毎日、命を失っている。肌の色ゆえに、健康に生活を送ることができず、早く亡くなってしまう」と訴えている。


【話題の記事】
「ドイツの黒人はドイツ人とは認められない」 ベルリンで起きた共感のデモ
動画:「鶏肉を洗わないで」米農務省が警告 その理由は?
マーモットの肉を食べた夫婦がペストに感染して死亡
ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことがわかった

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏が第3政党計画にブレーキと報道、当人は否定

ワールド

訪日外国人、4.4%増の340万人 7月として過去

ワールド

中国の7月原油輸入、ロシア産が増加 米国産は2カ月

ビジネス

日経平均は続落、4万3000円割れ 利益確定売り優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中