最新記事

アメリカ政治

トランプ、州兵動員拒否の州知事を非難「NY市はずたずたに」

2020年6月3日(水)09時01分

ミネソタ州で発生した白人警官の暴行による黒人男性死亡事件を受けた抗議活動が全国に拡大する中、トランプ米大統領は2日、州兵を動員して事態の収拾を図るという自身の提案に従わなかったとして各州の州知事を非難した。1日撮影(2019年 ロイター/TOM BRENNER)

米中西部ミネソタ州で発生した白人警官の暴行による黒人男性死亡事件を受けた抗議活動が全国に拡大する中、トランプ米大統領は2日、州兵(ナショナルガード)を動員して事態の収拾を図るという自身の提案に従わなかったとして各州の州知事を非難し、ニューヨーク市に混乱収拾のため州兵を動員するよう要求した。

全米各地では2日夜もデモが続くとみられ、数十の都市で夜間外出禁止令が敷かれている。州兵トップによると、1万8000人の州兵が29州で地元警察などの支援にあたっている。

抗議デモが各地で激化する中、1日夜にはデモ隊に対応していた警官が銃で撃たれる事態がセントルイスとラスベガスで発生。セントルイスでは警官4人が撃たれ、ラスベガスでは警官1人が撃たれた。このほかニューヨーク市では高級百貨店が略奪に遭うなど、混乱は広がっている。

トランプ大統領は1日、デモに対する市長や州知事の対応を批判し、暴力の鎮圧に米軍の動員も辞さない構えを示した。首都ワシントンに数千人の重武装兵や警察を動員するとし、市長や知事が事態を収拾できなければその他都市でも同様の措置を取ると表明した。

2日にはツイッターに「ニューヨークは略奪者や極左勢力のほか、まっとうでないあらゆる種類の人間に乗っ取られた。(ニューヨーク州のクオモ)州知事は州兵動員の提案を拒否しており、ニューヨーク市はずたずたにされた」と投稿。「ニューヨーク市は州兵を動員せよ。直ちに行動せよ!」とも書き込んだ。

クオモ知事は1日夜にニューヨーク市で発生した暴動と略奪に憤りを覚えているとし、ニューヨーク市のデブラシオ市長は事態を過小評価していた可能性があると指摘した。

その上で、1万3000人の州兵が待機状態にあることを明らかにし、合計3万8000人強の態勢でニューヨーク市の事態の沈静化は可能と述べた。また、トランプ大統領は抗議活動参加者と違法な略奪者を一緒に扱おうとしているとの見方も示した。

デブラシオ市長は、ニューヨーク市での州兵動員に反対する立場を表明。市内の混雑した状況に対応する訓練を受けていない州兵が介入すれば「恐ろしいことが起きる恐れがある」と述べた。

デモに対するトランプ大統領の対応を巡っては、国の結束を呼び掛け根本的な問題の解決を目指す代わりに衝突や人種間の対立をあおっているとの批判が出ている。

2016年大統領選でトランプ陣営のアドバイザーを務めたジェーソン・ミラー氏は「法と秩序を重視するトランプ大統領の対応は正しい。大統領は慰め役として雇われているわけではない」と述べた。

一方、大統領選の民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領は2日、トランプ大統領の対応を強く非難し、自身は米国における人種の分裂を癒やすことにコミットすると強調した。

*内容を追加します。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20200609issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相とクシュナー氏が会談、ガザ和平計画「

ビジネス

バフェット氏、株主へ「最後の手紙」 後任アベル氏を

ビジネス

ボーイング、セントルイス工場のスト終結目指し新提案

ワールド

米、スイスと貿易協定協議中 トランプ氏「関税下げ幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中