最新記事

感染症対策

WHO、新型コロナウイルスによる精神衛生上の危機を警告 子どもや若者、医療従事者へのケアが必要

2020年5月14日(木)16時46分

世界保健機関(WHO)の専門家らが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により世界で何百万人もの人々が死と病気にさらされ、隔離、貧困、不安に追いやられており、メンタル(精神)面の危機が迫っていると警告した。写真はワシントンで3月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

世界保健機関(WHO)の専門家らが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により世界で何百万人もの人々が死と病気にさらされ、隔離、貧困、不安に追いやられており、メンタル(精神)面の危機が迫っていると警告した。

WHOの精神衛生部門責任者のデボラ・ケステル氏は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)と精神衛生に関する国連の報告と政策指針を発表。「隔離と恐怖、不透明感、経済混乱により、精神的苦痛が生じている、または生じる可能性がある」と会見で述べた。

同氏は、精神疾患の発症が数と深刻さともに増す公算が大きいとし、各国政府は精神面のフォローを新型コロナ対応の「中心」に据えるべきと指摘。「精神と社会の健全はこの危機により深刻な影響を受けている。緊急に対応すべき優先課題だ」と述べた。

これまでに発表されている研究でも、すでに新型コロナにより世界的に精神衛生に影響が出ていることが示されている。具体的には、子どもたちが不安になったり、うつの事例が増加するほか、家庭内暴力も増加。医療従事者からは心理面の支援の必要性が増したとの声が上がっている。

WHOの報告は、特に影響を受けやすい集団として、学校や友達から引き離された子どもと若者、何千人もの感染者と感染による死亡を見ている医療従事者などを挙げた。

多くの人が健康への影響や隔離、孤独による苦痛に苦しみ、感染や死、家族を失うことを恐れていると指摘。政策立案者向けのメンタルヘルスに関する対応策のポイントとして、第一線の医療従事者への遠隔カウンセリングや、うつや不安を抱える人、家庭内暴力や貧困に見舞われるリスクの高い人々への積極的な働きかけなどを挙げた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・緩むとこうなる?制限緩和を試みた韓国にコロナのしっぺ返し
・東京都、新型コロナウイルス新規感染10人 3月下旬以来の少なさ
・WHO、複数の新型コロナウイルス治療薬に注目 ワクチン開発は難航と予測
・韓国・梨泰院のクラスター、新型コロナ感染102名に ゲイの濃厚接触者の追跡がネックに



20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー、EV課税拡大を計画 米テスラ大衆向けモ

ビジネス

アングル:関西の電鉄・建設株が急伸、自民と協議入り

ビジネス

EUとスペイン、トランプ氏の関税警告を一蹴 防衛費

ビジネス

英、ロシア2大石油会社に制裁 「影の船団」標的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中