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危機管理

民主主義vs権威主義、コロナ対策で優位に立つのはどっち?

DEMOCRACIES ARE BETTER AT MANAGING CRISIS

2020年5月29日(金)19時20分
シュロモ・ベンアミ(歴史家、イスラエル元外相)

権威主義体制の国は、自らの正当性を維持するためにプロパガンダや検閲に頼り、政府への信頼低下を招いている。中国が新型コロナウイルスについて発表する数字が信用できない理由も、イランやロシアの感染状況が報道されているよりはるかに深刻とみられている理由も、その点にある。

今回の危機への対応を評価する上では、政治体制とは関係のない経験値も考慮する必要があるだろう。ここでも民主主義国のほうが教訓を学んできたように思える。韓国は2015年のMERS(中東呼吸器症候群)流行の経験を生かし、今回は大規模な検査の実施に重点を置いた。だが中国はSARS(重症急性呼吸器症候群)のときの失敗を繰り返し、再び情報隠蔽を図った。

重要なのは、中国が教訓を学ばなかったのではなく学べなかったことだ。民主主義国では、危機は政治的テストである。対応に失敗すれば指導者が国民の信頼を得られず、次の選挙で落選するリスクがある。だが権威主義体制では、危機は体制の正当性を脅かす。つまり、その存続が危うくなる。

だから、情報隠蔽が最も安全な策に思えてしまう。そういう政府に対応を変えるよう期待することは、体制転換を求めるに等しい無理な話だろう。

©Project Syndicate

<本誌2020年6月2日号掲載>

【参考記事】英米メディアが絶賛、ニュージーランドが新型コロナウイルスを抑え込んでいる理由とは
【参考記事】台湾と中国、コロナが浮き彫りにした2つの「中国語政権」の実像

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