最新記事

中国

香港版「国家安全法」に猛反発、「香港の民主化が潰される」

Proposed Security Law Marks the End of Hong Kong, Human Right Watch Says

2020年5月22日(金)15時00分
クリスティナ・チャオ

今月10日、商業施設に集まった抗議デモ参加者に催涙ガス銃を向ける香港の警察隊 Tyrone Siu-REUTERS

<中国政府が「1国2制度」を実質的に破棄しようとしている、と人権団体や香港民主派は危惧する>

香港での国家分裂行為、反逆、暴動を禁止する「国家安全法」を適用させる中国政府の方針は、香港の高度な自治の終焉を意味する、と国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチなどは21日、危機感をあらわにした。

この「香港における法体系と執行メカニズムを確立、強化する」法案は、22日から始まる中国の全国人民代表大会(全人代)の議題になることが21日、明らかになった。通常ならば香港立法会(議会)の議決を経なければならないが、今回はそれを回避して適用される見通し。香港で激化する反中国政府、民主化デモを厳しく取り締まるのが狙いだ。

22日午前に本誌の取材に応じたヒューマン・ライツ・ウォッチの上級研究員マヤ・ウォンは、国家安全法によって「我々が知っている今の香港は終わる」と訴えた。

過去の中国の動きを考えれば、「香港のあり方が根本的に変えられる」ことは間違いない、とワンは言う。「香港の様々な基本的自由、価値観は制約され、香港の生活は激変するだろう。例えば、メディア報道の自由、言論の自由、市民社会存続の可能性などが問題となる」

抗議デモ、自由な発言は許容されない

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国部長のソフィー・リチャードソンは、これによって「香港の規範、慣習、関係する国際条約を中国政府が尊重するという『見せ掛け』は終わりを告げた」と見ている。

「最大のダメージは、抗議デモで街頭に出て、言いたいことを言っても中国に許容される、という期待は持てないことだ」と、リチャードソンは話し、今後香港のデモ参加者は、中国の安全の脅威とみなされる行動を避けるように注意しなければならない、と指摘した。

1997年にイギリスから中国に香港が返還された際、中国は高度の自治を維持する「1国2制度」を保証した。また中国政府は普通選挙の実施を約束したが、20年以上が経過した現在も、見せ掛けの民主制度にとどまっている。香港市民は投票権を持っているが、議会候補者のリストは中国の承認を経なければならない。

84年の中英連合声明で保証された「1国2制度」は、2047年に失効期限を迎える。しかしリチャードソンによれば、国家安全法は、中国政府がその期限よりも早く香港を吸収したい考えを持っていることを意味している、という。「これで一気に(失効期限の)2047年が近づいた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者32人に、子ども14人犠牲 

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中