最新記事

中国

香港版「国家安全法」に猛反発、「香港の民主化が潰される」

Proposed Security Law Marks the End of Hong Kong, Human Right Watch Says

2020年5月22日(金)15時00分
クリスティナ・チャオ

当然ながら、香港の民主派は猛反発している。公民党議員のデニス・クウォクは、「国家安全法が適用されれば『1国2制度』は公式に消滅する。それは香港の終焉を意味する」と述べている。

中国共産党は、中国の国家統治を弱体化させようと企む外部勢力から主権を守るために、この国家安全法が必要だと見ているようだ。2003年に香港政府は、令状なしの捜索や問題のある新聞の発行停止を可能にする、同趣旨の「国家安全条例」を提案しようとした。しかし、抗議デモが激化することを恐れて提案には至らなかった。

中国共産党傘下の英字新聞「チャイナ・デイリー」は21日付けの社説欄で、今回の国家安全法が抑止力として働き、「国家の安全を脅かす勢力」の言動の責任を問うことができる、と述べている。

ますます拡大する中国の影響力

リチャードソンは、中国政府は世界に対して冷酷なメッセージを送っていると指摘する。「どのような法的規制も相互合意も、中国政府は自分たちが考えた通りの意味として受け止め、中国に適合するように解釈する」ことを意味しているという。

「中国政府と合意事項を結んでいるいかなる国も、そうした合意に期待することはできない」と、リチャードソンは言う。

またワンは「香港を失えば、中国を道義的に監視してきた強力な民衆の力を失う」と話す。中国政府がその影響力を拡大し、ますます強力になる現状下では、その意味は大きいと言う。「中国の人権侵害は、もう中国本土だけにとどまらない」

情勢は厳しいように見えるが、リチャードソンは香港民主派の若者たちが国家安全法を受け入れず、すぐに抗議行動を再開するだろうと考えている。しかし、こうした抗議行動こそ、国家安全法が潰そうとしている対象だ。

2014年の香港の民主化デモ「雨傘運動」の指導者、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)は18年の本誌インタビューで、香港の民主化が「実現するまで」戦い続けるとその決意を語っていた。

「10年後くらいの期間ではまだ、我々は同じように戦っているだろう」とウォンは語った。「近い将来、(世界の)人々が香港のことを、ジャッキー・チェンや飲茶の故郷というだけでなく、市民が民主主義の実現のために戦っている場所として認識してもらえることを願う」

【関連記事】香港民主化を率いる若きリーダーの終わりなき闘い

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落、ハイテク株の軒並み安で TOPIX

ビジネス

JPモルガン、12月の米利下げ予想を撤回 堅調な雇

ビジネス

午後3時のドルは157円前半、経済対策決定も円安小

ビジネス

トレンド追随型ヘッジファンド、今後1週間で株400
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中