最新記事

新型コロナウイルス

感染者数2位のニュージャージー、医師である弟から届いたマスクの写真

2020年5月2日(土)16時45分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト)

米ニュージャージー州で麻酔科医として働く弟から届いた「N99」マスクの写真 写真:筆者提供

<麻酔科医として働く弟のことが心配でならないが、医療関係者もN95マスクが手に入らない同地で、市民らによる「マクガイバーイング」が広がっている>

自分が生まれ育った州、ニュージャージー。新型コロナウイルスの感染者数は、ニューヨークに次いでアメリカで2番目に多い。5000人以上が死んでいる。そんな危ない地域に弟が住んでいる。

しかも彼は病院で働く麻酔科医で、運ばれてくる新型コロナウイルス患者と真っ先に接するのだ。地域の人々を守っている弟のことは誇りに思うが、彼自身がこの病気で倒れるのではないかと心配でならない。

以前から話題になっているが、特に感染が集中しているニュージャージーのような地域では、医療関係者用の個人防護具(PPE)が足りない。弟が働く病院でももちろん、ないものはない。

でも、弟たち医師はPPEが病院に入ってくるのを待っていられない。とにかく一生懸命患者の治療にあたらなくてはならない。どうにかして自分の身を守ろうとしながら。

すなわち、防護具が病院にない以上、それがないままで働くか、自費で買うか、自分で作るかしかない。

アメリカに『冒険野郎マクガイバー』というテレビドラマがある。2016年からリメーク版が放映されているが、アメリカでは80年代から愛されてきた。

連邦政府関連の秘密組織のエージェントとして働く主人公アンガス・マクガイバーは、さまざまな事件を解決するのだが、どんなエピソードでも身の回りにある日用品を使って絶体絶命のピンチを切り抜けるシーンがある。その場面があまりにインパクトが強いためか、アメリカでは極端なDIYを番組にちなんで「マクガイバーイング(macgyvering)」と言うようになった。

そして今、医療関係者がその辺のごく普通のものから防護具を作ることも「マクガイバーイング」と呼ばれているのだ。

3月上旬からN95マスクが手に入らない

弟と彼の同僚が抱えている最大の課題はマスク不足。厳密に言えば、N95という医師用のサージカルマスクが足りない。N95の「95」とは95パーセントのことで、0.1~0.3μm(マイクロメートル)の微粒子を95%以上捕集できるから、そう呼ばれている。医療関係者としてぜひとも欲しいものだが、値段が高い上、感染拡大が深刻になっているニュージャージーでは特に、3月上旬からなかなか手に入らなくなっているらしい。

そこで、医師らが「マクガイバーイング」を考え始めた。普通に手に入るものを応用して、サージカルマスクに代わるマスクは作れないものか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中