最新記事

動物

新型コロナ都市封鎖が生み出す、動物たちの新世界

Animals Liberated by Pandemic?

2020年4月24日(金)18時00分
ラッセル・ジェイコブズ

magf200424_animal2.jpg

人の姿が消えた環境は動物たちにも何らかの影響を及ぼす(ニューヨーク) BARANOZDEMIR/ISTOCK

急激に行動が変化しそうな動物は身近にいる。市内ではリス、ハト、ネズミ、アライグマ、カモメ。周辺地域のクマやコヨーテも、新しい環境に適応しなければならない。

人間の残飯に頼ってきた動物たちは別の食料源を探し、餌場を求めて移動することになる。「興味深いことに」と、パーキンスは言う。「都会で生きる動物はたくましく、手に入るものは何でも食べる。だから短期的な環境変化にも素早く対応できる」

小さな変化から連鎖反応

動物たちの素早い対応の第一は、引っ越しだろう。大半のレストランが休業し、地下鉄の乗客が激減した今、ネズミは食料を求めて生活圏を移すしかない。アライグマやリスも公園が閉鎖されれば、ごみ箱に頼れない。ただし、ごみが公共空間から消えても、人間の食生活は変わらない。だからネズミは「残飯の出そうな住宅の近くに集まってくる」と、パーキンスは言う。

彼女の婚約者でコロンビア大学研究員のマシュー・コームズも、ニューヨークにいるネズミの研究で博士号を取得した人物。「ネズミと人間の関係は密接だ」と、彼は言う。「まず注意すべきは、レストランの近くにある住宅。閉店後に路上に出されるごみ袋を当てにしていたネズミたちが異変に気付けば、近場の住宅に目を向ける」

それでも交通量が多くて広い道路、とりわけ自動車専用道を野生動物が渡るのは難しい。「車が頻繁に通る道路があれば、野生動物の侵入を防ぎやすい」と、パーキンスは言う。「用心深い動物はそんな道を渡らない」

だが今は、交通量が大幅に減っている。道路は人工的な障壁の役目を果たせない。ならばウェールズの小さな町で実際に観察されたように、野生のカシミアヤギの群れが道路を悠然と歩き回る光景が見られてもおかしくない。人間に追われ、隠れていた動物たちが、元の居場所に戻ってくるわけだ。

素晴らしい、と単純に喜んではいられない。なにしろ都市空間の主客が転倒する事態だ。想像してみてほしい。動物園にいる動物たちが、ある朝目を覚まして、檻の鉄格子がなくなっていることに気付いたらどうなるか。道を渡ってきたシカの群れが住宅の裏庭をのんびり歩き回るだけなら牧歌的な光景だが、追い掛けるようにコヨーテやクマもやって来るはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カザフスタン、アブラハム合意に参加へ=米当局者

ビジネス

企業のAI導入、「雇用鈍化につながる可能性」=FR

ビジネス

ミランFRB理事、0.50%利下げ改めて主張 12

ワールド

米航空各社、減便にらみ対応 政府閉鎖長期化で業界に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中