最新記事

航空機

豪航空会社ヴァージンが経営破綻 新型コロナウイルス危機と債務負担で経営破綻

2020年4月21日(火)15時58分

オーストラリア第2位の航空会社ヴァージン・オーストラリア・ホールディングスは21日、自社の資本構成を変更し、より強固な財務基盤を得るため、任意管理に入ると発表した。シドニーで3月撮影(2020年 ロイター/Loren Elliott)

オーストラリア第2位の航空会社ヴァージン・オーストラリア・ホールディングスは21日、自社の資本構成を変更し、より強固な財務基盤を得るため、任意管理に入ると発表した。新型コロナウイルス危機と高水準の債務負担で経営破綻に至った。

デロイトが管財人に任命された。また、連邦政府からの14億豪ドル(8億8760万米ドル)の融資を確保できなかったという。

任意管理は米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)に近い手続き。

ヴァージン・オーストラリアは、ポール・スカラー最高経営責任者(CEO)率いる現在の経営陣が引き続き同社の運営に当たり、国内外のフライトは予定通り運航するとした。

同社は世界中で移動規制が講じられるよりも前に7年連続で赤字を計上していた。債務は50億豪ドル(31億5000万米ドル)。

デロイトのボーガン・ストローブリッジ氏によると、既に10以上の関係先から資本参加への関心が寄せられている。

同氏は電話記者会見で「一般的に、(事業の切り売りではなく)全体として売却するのが最良の結果をもたらすため、そのアプローチが好ましいことは間違いない」と述べた。

また、売却では拘束力のある債権者との合意である会社調整契約が盛り込まれる可能性が最も高く、その目的は数カ月以内に売却を完了させることだとした。

事情に詳しい関係筋2人がロイターに明らかにしたところによると、豪プライベートエクイティ(PE)のBGHキャピタルなどがヴァージン・オーストラリアに関心を示している。BGHはコメントを避けた。

ムーディーズは、無担保債権者が合意の一環として債権の大幅な減免(ヘアカット)を迫られる公算が大きく、回復見通しが不透明な中で会社清算が好ましい選択になる可能性があると指摘した。

フライデンバーグ豪財務相はメディアに対し、航空2社が主要路線を維持するとの観点で「市場主導の解決策」を見出すため、政府は10年にわたり投資銀行大手マッコーリー・グループを率いていたニコラス・ムーア氏を管財人に関与させることを決定したと明らかにした。

ヴァージン・オーストラリアは1万人を直接雇用しているほか、6000人を間接雇用している。同社が運航をストップすれば、オーストラリアでは事実上、カンタス航空の独占状態となる。

ヴァージン・オーストラリアは国内市場で約3分の1のシェアを占めているが、再編計画の下で縮小する見込みだ。

同社株の9割強はシンガポール航空、エティハド航空、中国の複合企業であるHNAグループ、実業家リチャード・ブランソン氏のヴァージン・グループを含む投資家グループが保有。ブランソン氏はツイッターで、自社はヴァージン・オーストラリアを健全な状態に戻すため、管財人、経営陣、投資家、政府と協力すると表明した。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・コロナ抗議デモ拡大、トランプが反抗をけしかけ「ミシガンを解放せよ」
・米カリフォルニア州で新型コロナウイルス抗体検査 感染者、公式統計の40倍の可能性
・コロナの余波「食品値上がり」──世界的な買いだめと売り惜しみの悪循環
・夏には感染は終息する、と考えていいのか?


20200428issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スターマー英首相私邸で不審火、建物一部損傷 ロンド

ビジネス

午前の日経平均は続伸、3万8000円回復 米中摩擦

ワールド

新ローマ教皇がゼレンスキー氏と電話、外国首脳と初対

ワールド

エジプト、スエズ運河通行料を割引へ フーシ派攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中