最新記事

感染症対策

「新型コロナウイルス、経済再開には広範な検査不可欠」米食品医薬品局長官

2020年4月13日(月)12時00分

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため実施されている外出制限を解除する時期や方法を米ホワイトハウスが検討する中、米国の公衆衛生専門家らは12日、国内の検査体制を強化する必要があると訴えた。写真はニューヨークで6日撮影(2020年 ロイター/BRENDAN MCDERMID)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため実施されている外出制限を解除する時期や方法を米ホワイトハウスが検討する中、米国の公衆衛生専門家らは12日、国内の検査体制を強化する必要があると訴えた。

食品医薬品局(FDA)のハーン長官はABCの番組で、国内で200万件以上の検査がこれまでに実施されたものの、検査を必要とする人の多くが依然として受けられない状態だとし、拡充が必要なのは間違いないと述べた。

米国では不十分な検査が対応の遅れにつながり、これまでに50万人超が感染、2万人を超える死者が出ている。

トランプ大統領は前週、検査の重要性を軽視する発言をしていた。

一方で、ホワイトハウスの新型コロナ対策本部の専門家らは、経済再開に踏み出す際にはとりわけ検査が重要になるとの考えを明確にしている。

FDAのハーン長官は「5月以降、夏、さらには秋に向けて、診断のための検査とともに抗体検査を拡充する必要性が非常に高まる」と述べた。

診断のための検査では患者がウイルスに感染しているか調べるのに対し、抗体検査はすでにウイルスに感染して免疫を持つ人を特定する。専門家は、市民の職場復帰やその際の感染封じ込めには両方の検査が重要になるとしている。

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長はCNNの番組で「(感染防止のための)制限措置の一部を緩和し始めれば、感染する人が出てくることは分かっている。それが現実だ」と述べた。その上で「リアルタイムで感染者を特定、隔離し、接触者を追跡することが極めて重要になる。これが封じ込めだ」と語った。

FDAのハーン長官はNBCの番組で、全米の業者と協力して診断のための検査の拡充に取り組んでいると述べた。

抗体検査については、FDAがこれまでに承認したのは1件にとどまっており、市場で出回っている他の検査キットは精度が不十分な可能性もあると注意を促した。

ニュージャージー州のマーフィー知事はCBSの番組で、同州では症状のある人にしか検査を実施できない状況だとし、より多くの検査を行う必要があると強調した。

また、周辺の州との間で、検査や接触者追跡の問題に加え、州境をはさんで意図せぬ影響が生じないよう飲食店などに関するルールをどうするかといった問題を巡り、週末に踏み込んだ議論を行ったと明らかにした。

ニューヨーク州のクオモ知事は12日の記者会見で、検査の拡充や連邦政府による一段の支援が必要としたほか、経済戦略と一貫性のある公衆衛生戦略が必要だと指摘。「最も回避したいのは感染率の上昇だ」と述べた。

ニューヨーク市のデブラシオ市長は、入院患者や医療従事者、救急隊員ら優先される人以外も検査を受けられるようホワイトハウスと連邦緊急事態管理局(FEMA)に検査拡充を要請しているとした上で、同市では今週11万個の検査キットが必要になると述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・封鎖解除後のコロナ「震源地」武漢はこうなった
・新型コロナウイルス感染症で「目が痛む」人が増えている?
・猫のコロナ感染率は15%――「人→猫」「猫→人」感染は?
・気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること


20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、メキシコ産トマトの大半に約17%関税 合意離脱

ワールド

米、輸入ドローン・ポリシリコン巡る安保調査開始=商

ワールド

事故調査まだ終わらずとエアインディアCEO、報告書

ビジネス

スタバ、北米で出社義務を週4日に拡大へ=CEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中