最新記事

ベビーブーマー

ミレニアル世代に知ってほしいベビーブーム世代の功績

OK, Millennials

2020年4月10日(金)16時15分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

若者はベビーブーム世代のお説教など聞きたくないようだが VIEWAPART/ISTOCK

<ミレニアル世代の若者に次世代のバトンを渡す前に、この50年の世界の変化とブーマー世代の成果を総括してみよう!>

近頃、若者たちの間で盛んに使われているフレーズがある。「オーケー、グーグル」ならぬ「オーケー、ブーマー」。「はい、はい、分かりましたよ、ブーマーさん」というニュアンスだ。若者はベビーブーム世代のお説教など聞きたくないらしい。

私たちも親の世代に同じようなセリフを吐いたものだ。ミレニアル世代よ、君たちの気持ちは分かる。ただし、1つだけ覚えておいてほしい。心理学の権威スティーブン・ピンカーらが指摘しているように、世界の人々はいま人類史上最も恵まれた生活を送っている。そして、私に言わせれば、それはベビーブーム世代の奮闘によるところが大きい。

ベビーブーム世代は人類史上最も独創的で、最も心優しく、最も勤勉な世代だ。自画自賛もいいかげんにしろって? メジャーリーグの伝説的な投手ディジー・ディーンは言った。「ちゃんとした裏付けがあるなら、それは自慢じゃない」

ミレニアル世代の君たちは自分たちが史上最も厳しい試練に直面していると思っているようだが、果たしてそうだろうか。

2008年の金融危機? 1930年代の大恐慌に比べたら、どうってことない。所得格差? 今のアメリカの貧富の差は人類史の平均に近く、ピークだった19世紀末には程遠い。学生ローン? ミレニアル世代が抱えるローン総額は1兆6000億ドル。今後30年間にベビーブーム世代がミレニアル世代に譲り渡す遺産総額は68兆ドルだ。運が良ければ親の遺産で借金を完済できるだろう。

君たちの世代の悩みなど贅沢な悩みだなどと言うつもりはない。例えば気候変動は文明の存続を脅かしかねない。だが、そもそも人類はこれまで何度も存亡の機に瀕してきた。ベビーブーム世代は核戦争の脅威を身近に感じる時代に生き、「核の冬」の訪れも絵空事ではなかった。

レーチェル・カーソンは1962年の著書『沈黙の春』で有毒な化学物質が世界中の生態系を破壊すると警告した。スタンフォード大学のポール・エーリック教授は1968年の著書『人口爆弾』で、人口の爆発的増加により1970、80年代には世界中が深刻な食糧不足に陥ると予測。国際的研究団体のローマ・クラブは1972年の報告書で、2008年までに世界の資源は枯渇し始めると警鐘を鳴らした。

こうした惨事は1つも起きなかった。なぜか? ベビーブーム世代が危機に対処してきたからだ。

君たちミレニアル世代も頑張ってくれるだろう。君たちは人類史上最も知能が高く、健康で、最も高い教育を受けた最も有能な世代だ。

ピュー・リサーチセンターによると、アメリカでは昨年、ミレニアル世代がベビーブーム世代を抜いて人口が最も多い年齢層となった。私たちは舞台の袖に退場し、これからは君たちが主役を務める番だ。

ここでベビーブーム世代がやり遂げたこと、当然ミレニアル世代にも期待されることを確認しておこう。基準にするのは、ベビーブーム世代の最年長者がミレニアル世代の最年少者の今の年齢(=23歳)だった1969年。先に断っておくが、私たちが君たちに受け渡す世界は、私たちが前の世代から受け取った世界よりもはるかに素晴らしい世界だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英国王夫妻、トランプ米大統領夫妻をウィンザー城で出

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中