最新記事

韓国社会

韓国、新型コロナウイルス感染拡大の元凶? 信者24万人の「新天地イエス教団」とは

2020年3月7日(土)18時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

議論を呼んだのは土下座より時計?

怒号の飛ぶ中行われた記者会見で、教主のイ・マンヒが土下座をするシーンは、日本でも報道されたためご覧になった方もいるかもしれない。しかし、韓国で議論を呼んだのは土下座ではない。教主の左手に輝く金の腕時計だった。

通称「朴槿惠時計」と呼ばれるこの時計は、文字盤にはハングルでしっかり「박근혜」と朴槿惠前大統領の名前が刻まれている。朴槿惠前大統領といえば、言わずと知れた韓国歴史上初の女性大統領でありながら、弾劾制度が導入されてから韓国歴史上初めて罷免された人物でもある。

記者会見が中継で放送された直後から、この時計に注目が集まり、政界では新天地と特定の政党の癒着関係があったのではないかと疑いの声が上がった。新天地イエス教会側は記者会見から2日後「ある信者から以前プレゼントされたものだ」「教主が愛用している時計で政治とは無関係」と弁明を発表した。

しかし、教主イ・マンヒが以前「(朴槿恵前大統領が所属していた)セヌリ党(現:未来統合党)という党名は私が命名した」と話していたと暴露する元幹部も現れた。今年の春には統一選挙が控えている韓国では、今の時期何かにつけて政治問題と結び付けがちだが、癒着疑惑はさらに深まるばかりだ。

さらに、イ・マンヒが記者会見の退出の際、カメラに向かって親指をあげる、いわゆる「Goodサイン」をしたことから、反省の色が見えない、との批判が上がった。一方では「このポーズは新天地イエス教会のサインであり、信者を鼓舞しているのではないか」など、会見後数日が過ぎた今でも様々な憶測が飛び交っている。

「新天地イエス教会の信者」めぐる魔女狩りも

政治と宗教団体の癒着と共に、芸能界との癒着もよく耳にする噂だ。新天地が注目を浴びるようになり、ネット上では芸能人の信者探しが始まり、疑わしいとされる有名人の名簿一覧が勝手に作成され出回っている。

芸能人はイメージ管理も職業のうちと言われるように重要視されている。そのため、このような噂は早く払拭しなければならない。歌手のIVYは、自身の名前が載った名簿をキャプチャーし、否定と怒りのコメントと共にSNSにアップした。既に削除済みだが、ファンやフォロワーから広く拡散されている。俳優のイ・ドンウクもこの信者疑惑名簿の被害者だ。所属事務所スターシップ・エンターテインメントは、公式文書を発表し教団と無関係であることを公にした。

IOI出身の歌手チョンハは、イタリアのミラノで行われたファッションウィークでの撮影終了後、一緒に同行していたイタリア人スタッフの一人がコロナ陽性だったため、症状はないものの検査を行い結果陰性だった。しかし、万が一の事も考え、疾病管理本部の要請によって自宅隔離を行っていた。ところが、ここから噂が発生し信者疑惑がかけられてしまう。チョンハは、動画生配信を自宅から行い、「自分を含め全てのスタッフはあの宗教ではない」と、はっきり断言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア・ガスプロム、今年初のアジア向けLNGカーゴ

ワールド

豪CPI、第1四半期は予想以上に上昇 年内利下げの

ワールド

麻生自民副総裁、トランプ氏とNYで会談 中国の課題

ビジネス

米石油・ガス業界のM&A、第1四半期は過去最高の5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中