焦点:再び円安警戒モード、高市氏「ほくほく」発言は想定外 首相官邸が火消し
2月3日 「外為特会がほくほく」などと高市早苗首相が円安のメリットに言及したことは、多くの政府関係者にとって想定外だった。写真は2022年6月撮影(2026年 ロイター/Florence Lo)
Takaya Yamaguchi Makiko Yamazaki
[東京 3日 ロイター] - 「外為特会がほくほく」などと高市早苗首相が円安のメリットに言及したことは、多くの政府関係者にとって想定外だった。首相官邸が即座に火消しに回ったものの、米国と協調して歯止めをかけたはずの円安の流れを逆回転させる発言が首相から飛び出し、当局は再び警戒モードに入っている。
<補足説明に追われる>
「変なことを言っているな」。高市氏の発言が伝わった1月31日午後、政府関係者の1人はまずそう思った。
高市氏は衆院選の応援演説に駆け付け神奈川県川崎市で、「いま円安だから悪いって言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。食べ物を売るにも、自動車産業も、米国の関税があったけれども、円安がバッファーになった。ものすごくこれは助かりました」と発言。さらに外国為替資金特別会計(外為特会)の運用状況に触れ、「円安でもっと助かっているのが、外為特会っていうのがあるんですが、これの運用、今ほくほく状態です」と述べた。
別の関係者によると、高市氏は事前に準備された原稿を読んだわけではなかった。想定外の発言はメディアを介して瞬く間に広がり、金融市場は高市氏が円安を容認していると受け取った。
高市氏が自身のソーシャルメディア(SNS)アカウントで「一部報道にあるように『円安メリットを強調』した訳ではない」と釈明したのは、東京で市場が開く前の2月1日のことだった。別の政府関係者は「Ⅹ(旧ツイッター)で意図を補足する対応に追われた」と打ち明けた。さらに別の関係者によると、投稿内容の英訳は確実に米当局に伝わるようにしたという。これまでのところ、米側から発言に対する反応はみられない。
<「米国売り」波及を警戒>
政府関係者らが高市氏の発言に慌てたのは、1ドル=159円台前半を付けた1月23日の円安局面以降、過度な円安に歯止めをかけようと動いてきたからだ。米国時間の同日正午ごろ、ニューヨーク連銀が為替介入前に通常行うレートチェックを実施したことがロイターの取材で明らかになっている。
事情を知る複数の関係者によると、首相が19日に衆院解散を表明した直後の日本国内の金利急騰に、ベセント米財務長官が不快感を示し、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で片山さつき財務相に「日本の金利上昇が(米国の)トリプル安を招いた」と、日本側に対応を求めた。そこから日米が連携し、米当局のレートチェックにつながった。
片山氏はレートチェックの有無についてコメントを控えている。ベセント、片山両氏のやり取りについてロイターは米財務省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。
そもそも衆院選に先立ち与野党が消費税減税を訴え、財政不安に伴う円安も招いていた。円安を放置すれば、巡りめぐってさらなる金利上昇を招く懸念もあった。
それだけに、市場では「米当局は円金利の上昇が米金利上昇を通じた『米国売り』につながることを危惧している。米側からしても、望ましくない発言だったのではないか」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミスト)との受け止めが聞かれる。
<けん制効果の半分失う>
1月27日に一時152円台まで下げたドル/円は、週明け2日に155円台まで上昇した。関係者によると、財務省はその日、欧州勢が市場に参加してくる時間帯の為替の動きを注視した。片山氏は3日の閣議後会見で、高市氏の発言について「教科書に書いてあることを申し上げたのであり、特に、円安メリットを強調しているわけではない」と述べたが、ドル/円は足元も155円台半ばで推移しており、レートチェックなどを通じた日米当局によるけん制効果の約半分を失った。
みずほ証券の⼭本雅⽂チーフ為替ストラテジストは「歴史的な円安の現状への危機感は皆無で、むしろ円安が経済にとって好ましいという高市首相の持説が変わっていないことが露呈した」と話す。
米財務省は直近の為替報告書で、日銀への要求を取り下げるかわりに、円安の背景に拡張的な財政方針があると指摘した。8日投開票の衆院選次第で、金利上昇と円安の両面から市場の揺さぶりをかけられる懸念も拭えない。
(山口貴也、山崎牧子 取材協力:竹本能文、鬼原民幸、木原麗花 編集:久保信博)





