最新記事

鉄道

新型コロナウイルス、運転士が感染すると通勤電車「半減」の危機 欠勤1割なら平日ダイヤ維持できず

2020年3月9日(月)17時15分
西上いつき(鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表) *東洋経済オンラインからの転載

列車運行が半分になったら?

仮にこのような運転を行った場合は社会混乱は必至、経済活動にも大きな影響を与えることになるだろう。テレワークができる一部の事務職については在宅勤務の対応になるだろうが、サービス業・医療機関など現地出勤する必要がある職種にとっては、社会インフラである鉄道運行の縮小は大きな影響を及ぼす。

また、一気に大きな削減をするのではなく、段階的な削減をして、平日に比べて乗務員数が少なくて済み、例えば既に定期ダイヤとして存在する「土休日ダイヤ」を第1弾として、その後に欠勤職員数に応じて順序立てて減便していくという段取りも予想される。

海外の鉄道事業者の対策は?

コロナウイルスにより2月21日に最初の感染死亡者を出してしまったイタリアでは、感染確認がされた翌日の22日には、関連都市の3つの駅において列車を停止させないという早期かつ大胆な判断に踏み切った。さらに隣国のオーストリアとイタリアを結ぶ列車の運行も停止された。

海外の事情と日本との状況は違うにせよ、公共交通を運休させるという判断をすぐに行ったあたりは、日本との対応の違いが出た。日本国内では考えにくいが、このような突飛ともとれる封鎖行動こそが特効薬になる場合もあるだろう。ほかにも、香港は1月30日に中国本土から高速鉄道が乗り入れる西九龍駅を閉鎖するなど、鉄道の運休や駅閉鎖は世界的に行われているのだ。

車掌や駅員をはじめとした接客対応も戦々恐々とした状況だ。ある鉄道従業員に話を聞くと「不特定多数の人と接するので、対策をとっていてもいつ罹患(りかん)してもおかしくない。急病人の方が発生したときなどはとくに怖い」と話す。平常ダイヤから減便ダイヤへの移行も、あながち戯論ではなく、現実的に検討しなければならない段階となってきた。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg


【関連記事】
・新型コロナウイルス感染症はいつ、どう終息するのか
・米、新型コロナウイルスによる死者19人に 感染者21人増でNY州が非常事態宣言
・韓国、新型コロナウイルス感染拡大の元凶? 信者24万人の「新天地イエス教団」とは

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干

ワールド

アングル:欧州最大のギャンブル市場イタリア、税収増

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中