最新記事

鉄道

新型コロナウイルス、運転士が感染すると通勤電車「半減」の危機 欠勤1割なら平日ダイヤ維持できず

2020年3月9日(月)17時15分
西上いつき(鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表) *東洋経済オンラインからの転載

運転士の感染リスクは?

最も恐れるべき状況は、オペレーターである現場職員への感染拡大である。とくに資格や適性検査、専門的な訓練が必要な運転係員や車両の定期検査をするための検査係員がいなくなった場合は、列車運行そのものができなくなってしまう。現時点では国土交通省より各事業者に対してマスク着用と手洗い消毒など、一般的レベルの予防策の通達は来ているようだ。また、車両においても一部列車にて車内消毒が行われているが、これはすべての車両を対象にしているわけではない。

国交省が2014年に発表している「公共交通機関における新型インフルエンザ等対策に関する調査研究」の中で、「乗務員の欠勤率が1割程度となったとき、平日ダイヤを維持できない鉄道事業者は半数以上」というアンケート結果がある。

例えば、乗務員が出退勤を行う運転区において感染が発生したならば、たちまち休暇・非番の担当者が時間外出勤という形で穴埋めをしなければならない。ただでさえ人手不足が叫ばれている昨今、すでに時間外勤務で工数を賄っている事業者も少なくはない。そんななかで感染拡大を受け1割程度の乗務員が欠勤となるだけで、鉄道の通常運行が危ぶまれる形となる。では、そのような事態になったとき、事業者はどのような運行を行うのであろうか。

事業継続計画に基づき非常事態用ダイヤで運行

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、事業者が緊急事態の発生時にも基礎となる業務を継続するために、事象発生時にスムーズに措置ができるようあらかじめ策定しておくものだ。2017年に内閣官房新型インフルエンザ等対策室より公表された「新型インフルエンザ等対策に関する指定公共機関に対する調査報告書」において、フェリー・航空・鉄道の事業者向けに行ったアンケート結果として、8割以上がBCPを策定していると回答している。

BCPを策定している鉄道事業者の多くは、各事業者の根幹となる鉄道事業の継続のため非常事態に備えて通常より少ない本数にて列車運行を行うため、乗務員への感染拡大に備えた非常事態用ダイヤを作成し、いざというときに切り替えが実施できる体制を構築している。

その判断基準や運行率はそれぞれ異なるが、例えばJR東日本が内閣官房に提出した「事業継続計画概要」によると、2009年に同社が策定した「新型インフルエンザ対策要領」では、新型インフルエンザに社員の40%が感染したと想定する場合に列車運行率を5割程度に削減するとしている。乗客の人数が平時と比較して減少するとはいえ、車内の混雑は平時よりもさらにひどくなるのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ高官、「国益守られる」と評価 有志国会合

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、12月2%に減速 ECB目標と

ビジネス

独失業者数、12月は予想下回る増加 失業率6.3%

ビジネス

シェブロン、ルクオイル海外資産入札でPEと連携 2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中