最新記事

中国株

中国経済、新型コロナウイルス感染拡大の影響は想像を上回る

Knock-On Effects of China’s Coronavirus May Be Worse Than Thought

2020年2月4日(火)16時40分
キース・ジョンソン、ジェームズ・パーマー

中国へのフライトを停止した航空会社は数限りない。なかには4月まで再開の予定がない会社もある。アジア諸国は中国人の入国を厳しく制限しており、アジアの観光産業も深刻な打撃を受けるだろう。タイのように、中国人を入れるなと要求する国民と、中国の中間所得層が来なければ干上がってしまう観光業界との狭間で悩ましい対応を迫られている国もある。中国人の入国禁止によるタイの観光業の損失は15憶ドルに上ると推定される。

商品市場もウイルスの影響を痛感している。中国を大口顧客とする原油の価格は、ニューヨークでもロンドンでもウイルス発生以降の1カ月で15%下落した。原油収入に依存する中東ロシア、そしてシェールオイルで稼ぐアメリカにとってさえ、悪いニュースだ。エネルギーコンサルタントのウッド・マッケンジーは、今年の前半は中国の需要が激減し、OPECは原油価格の下落に歯止めをかけるために再び生産量を減らさなければならなくなる可能性もあるという。OPEC最大の産油国サウジアラビアも、大幅な生産調整を検討中と言われている。

米中「第一段階の合意」もおあずけ

影響は新興国や途上国に限らない。オーストラリアとカナダは銅に対する需要減少で苦しむことになる。米中貿易交渉「第一段階の通商合意」に輸出増の期待を懸けていたアメリカの農家も製造業も、おあずけを食らったまま。いつ取引が再開するかのメドすら立たない。

ほとんどのエコノミストは、中国政府は景気減速を回避するため一段の景気刺激策と金融緩和を打ち出すだろうとみている。経営不振の企業には補助金を出し、人民元を安くして輸出を助ける。なかでもトランプ政権が忌み嫌っているのが人民元安だ。第一段階の合意でも、中国に為替操作をやめると約束させた成果を強調したばかり。だが中国に、アメリカと歩調を合わせようとする気配はない。それどころか、ウイルス感染を恐れて中国を締め出そうとする国際社会の動きをアメリカのせいにし始めている。
(翻訳:森美歩)

From Foreign Policy Magazine

20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

3月のスーパー販売額は前年比9.3%増=日本チェー

ビジネス

仏ルノー、第1四半期売上高は1.8%増 金融事業好

ビジネス

日経平均は続伸、米ハイテク株高が支援 一巡後は伸び

ワールド

シンガポール3月コアCPI、前年比+3.1%に鈍化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中