最新記事

中国株

中国経済、新型コロナウイルス感染拡大の影響は想像を上回る

Knock-On Effects of China’s Coronavirus May Be Worse Than Thought

2020年2月4日(火)16時40分
キース・ジョンソン、ジェームズ・パーマー

感染の拡大が世界2位の経済大国である中国にとってどれほどの打撃になるのかについて、多くのアナリストが引き合いに出すのが2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)だ。SARSが中国経済の成長率に及ぼした打撃は推定1%以上だった。だが新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響はそれよりもっと大きいだろうと予想されている。

その理由は幾つかある。まず、中国経済の規模は当時よりもはるかに大きい。また金融危機以降、エネルギーを大量に消費する製造業や輸出からサービス業や内需へと重心を移したために、中国経済は以前よりも突発的な混乱に弱くなっている。手っ取り早く輸出主導の景気回復を目指すことが以前より難しくなっているのだ。

さらに2019年の中国経済はGDP成長率が前年比約6%増と1990年以降で最も低い水準に終わり、アメリカとの貿易戦争が続いたことで景況感も悪化した。景況感を示すPMI(製造業購買担当者景気指数)は、ウイルスの影響が織り込まれる前の段階で、既に下落の兆候を見せていた。

「つまり中国経済は、SARSの時より弱った状態にある」と、仏銀行ナティクシスのアジア太平洋担当主任エコノミストであるアリシア・ガルシアエレーロは言う。「経済成長のペースは2020年の第1四半期に大幅に落ち込み、その後は徐々に安定していくだろう」

「休業でも給料は払え」?

各地で交通の遮断が長引いていることで、中国では人の移動や職場の人員確保、小規模企業の営業まで様々な混乱が生じている。人員不足に加えて、感染の流行がいつまで続くのか見通しが立たないため、キャッシュフローが滞る企業も出てくる。それでも中国政府は各企業に対し、新型コロナウイルスの影響で休暇が延長となった従業員や、移動制限のために仕事に戻れない従業員については、休んでいる間も給与を支払うようにと通達を出している。

「多くの中小企業にとって、営業の停止や事業所の閉鎖は大きな痛手で」、その影響は第3四半期まで続く可能性があると、英リスク分析会社ベリスク・メープルクロフトの中国専門家である余嘉豪は言う。「ウイルスの流行の影響で、中国の産業の生産サイクルが遅れることになるだろう」

各種工場の閉鎖は海外企業にも混乱をもたらしており、アップルのような巨大企業までもが中国国内での生産を一時的に停止し、オフィスや店舗を閉鎖している。中国のサプライヤーに依存している多くの米企業が、生産や部品調達の困難に直面しており、これによって米企業の中国離れと米中経済の「切り離し」がますます加速することになる可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中