最新記事

新型肺炎

新型コロナウイルス、中国本土以外で初の死者 フィリピン厳戒態勢で拡大防止へ

2020年2月3日(月)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

新型コロナウイルスの感染者が出たフィリピンでは、薬局にマスクを求める人びとが押し寄せた。 Eloisa Lopez - REUTERS

<医療システムが十分ではない地域も多い東南アジアで、新型コロナウイルスの死者が出た>

中国湖北省武漢から中国全土、そして世界各地に感染が拡大している新型コロナウィルスによる肺炎は、中国国内でこれまでに361人の死亡が確認されているが、2月1日にフィリピンで感染者1人の死亡が確認され、中国以外での最初の死亡例となった。

事態を重視したフィリピン政府は中国人や中国からの外国人などのフィリピン入国を厳しく制限するとともに、死亡した感染者と同じ航空機に搭乗していた乗客や乗員を可能な限り隔離する方針を明らかにするなどしてこれ以上の感染拡大の防止に全力を尽くしている。

フィリピンのフランシスコ・ドゥケ保健相は2日に会見して、マニラのサン・ラザロ病院に入院して肺炎の治療を受けていた中国人男性(44)が1日に死亡したことを明らかにした。この中国人男性はフィリピンで1月30日に初の新型肺炎感染者として確認された38歳の中国人女性のパートナーとして同じ航空機に搭乗してフィリピンに入国していた。

「フィリピン・スター」「インクワイアラー」など地元各紙の電子版などによると、死亡した中国人男性は女性とともに武漢から香港を経由してセブ・パシフィック航空機で1月21日に中部ビサヤ諸島にあるセブ島に到着した。

翌22日にセブ・ゴー航空機でネグロス島のドゥマゲテ空港に向かい、その後25日にフィリピン航空機でマニラに到着している。

保健省などによると男性は香港から全ての旅程で同行していた同じ武漢出身の中国人女性と同様、フィリピン入国前からせきや発熱の症状を訴えたためマニラ到着後に直ちに入院、隔離措置をとって治療を受けていた。

女性はフィリピンで初の感染例として発表されていたが、同じく感染が確認されて2例目となった男性が1日に死亡し、中国本土以外で初めての死者となった。

地元メディアなどはこの男性は容体が安定し、回復傾向をみせていたものの1日に急に容体が悪化して死亡したと伝えている。

中国人女性の方は男性と同じマニラのサン・ラザロ病院で隔離されている。現時点で症状は重篤ではないというが、男性が症状が急変して死亡したことから警戒を強めて治療を続けているという。

当初から厳しい措置のフィリピン政府

フィリピン政府はドゥテルテ大統領の指揮の下、新型肺炎のフィリピン国内への感染拡大にいち早く対応し、1月27日までに中部パナイ島にある国際的観光地ボラカイ島を訪れていた武漢などからの中国人観光客約500人を複数回に分けて政府がチャーターした航空機で中国に送還する「強制送還」に着手するなどして国内感染を防ぐ努力を続けていた。

しかし中国人観光客男女の感染、男性の死亡という事態を重く見た政府は1日の死亡発表を受けて2日から、それまでの中国・湖北省からの入国制限を香港、マカオと中国本土から訪れる中国人、外国人全ての入国制限に拡大する措置を発表している。

その一方で武漢など湖北省に未だに取り残されているフィリピン人約300人についても早期に帰国させる方針を打ち出し、中国当局とチャーター便の運航許可などについて鋭意調整しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P小幅安、FOMC結果待ち

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、雇用市場に依然底堅さ

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、FRBの政治介

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中