最新記事

新型肺炎

新型コロナウイルス、中国本土以外で初の死者 フィリピン厳戒態勢で拡大防止へ

2020年2月3日(月)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

死亡男性との接触者捜索、遺体は火葬へ

保健省では現在、感染した中国人男女と同じ航空機に搭乗していた乗員やパイロットなど身元の判明している人達を医療施設に隔離して経過観察を続けている。同時に搭乗した航空機の乗客、滞在したホテル関係者、利用した交通機関などでこの男女と接触した可能性のある人達の追跡調査を鋭意進めているとしている。

だが、フィリピン入国後の移動で複数の航空機を利用していることや利用した公共交通機関の特定が難しいことなどから接触した人々の発見、隔離にはなお時間がかかりそうだ。

とはいえ同省では国内感染拡大防止を最優先とするドゥテルテ大統領の強い方針を受けて、接触した人々を早期に割り出して、発見次第隔離措置をとる方針を再確認して関係各方面に捜索を依頼している。

3日に会見したドゥケ保健省は3日の時点でフィリピン国内では67人が新型肺炎に感染した可能性があるとして隔離、検査を受けていることを明らかにした。

その一方で保健省は1日に感染後に死亡した中国人男性の遺体について「(遺体の搬送などで)さらなる感染の危険性を完全に排除できない」との見方を示している。

このため可能であればマニラ市内の火葬場で火葬に付して遺骨を中国側に返還する方針を示し、現在マニラの中国大使館と協議、調整中であることを明らかにした。火葬した場合には感染したウィルスが死滅するため2次感染の危険性はなくなる、としている。

中国国内以外で初の新型肺炎感染者の死亡例が出たフィリピンだが、「今回の死亡例はフィリピン国内で感染したものでもなく、フィリピン人が感染した訳でもない」(保健省関係者)として政府は過度に不安にならないよう呼びかけている。また、国民の方も感染拡大措置がとりあえず自国民保護という観点ではこれまでのところ機能しているとの見方から、ドゥテルテ政権に対する信頼度は高まっているという。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など



20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

AESCのEV電池工場建設、英政府が資金調達支援

ワールド

米国務長官、英外相・独首相と個別に電話会談 印パ関

ワールド

トランプ・メディアがM&Aで事業拡大方針、利益相反

ワールド

シリア暫定大統領、米大統領との会談模索 トランプタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中