最新記事

韓国社会

革新系・文在寅でもLGBTには冷淡? 韓国、トランスジェンダー軍人と学生の訴えは......

2020年2月10日(月)18時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

「合格おめでとう、私たちはここにいる」

もちろん大学側は、「学校規定上、性転換者の入学制限などしていない」と入学を認めている。しかし、反対の声が強まり、淑明女子大を含む徳性女子大・同徳女子大・ソウル女子大・聖信女子大・梨花女子大などソウル地域にある有名女子大の21団体は「女性の権利を脅かす性別変更に反対する」という声明書を発表した。

団体側によると「支持署名が声明書を上げてから12時間ですでに1万人を突破した」「男性から女性に性転換したトランスジェンダーが女子大に入学するのに反対するのは嫌悪の意味ではなく、ただ女性の安全な空間を守ることを願うだけ」と主張している。

このような激しい攻撃を受ける合格者Aさんに対し、支持者たちが立ち上がった。Twitterでは「合格おめでとう_私たちはここにいる (#합격축하해요_우리가여기있다)」というハッシュタグが登場し、Aさんの合格を祝うツイートと共に、励ましの言葉が次々と投稿された。

周囲の騒動のなか、彼女の選択は

しかし、Aさんが下した決断は「入学拒否」だった。今月7日の報道によると、入学前からあまりにも注目度が上がってしまったため、通学に対して恐怖を感じてしまったのだという。Aさんは、2021年度の入学に向け女子大以外の一般大学の入試を準備中だと発表した。

韓国初のトランスジェンダー女子大生としてあまりにも注目が集まったため、想像以上の負担を強いられたのだろう。ただ普通の女生徒として勉強したかっただけなのに余計なプレッシャーがかかってしまい、貴重な大学生活を充実したものにできなければ元も子もなくなってしまう。今回のことがAさんの心の傷になっていなければよいが、多くの支持者が残したツイートが彼女に届き、自分の味方も大勢いることを知って新たな学生生活を送れるように願いたい。

冒頭にも書いたように、ジェンダーの多様化は進んでいる。これは、ここ最近に始まったわけではなく、太古の昔から人々の心の中には様々なジェンダーが存在していたはずだ。それを、これまでは2つの性別に線引きしてどちらかに押し込め、たとえ居心地の悪さを感じても目をつぶってどちらかに当てはめてきた。しかし、これからはよりしっくりくる場所に自分の身を置いてみてもいいのではないだろうか?

まだ社会がそれに追いついていないため、今回のような問題が起こってしまったが、始まりは何事であっても対立が起きやすい。いつの日か、「え? そんな時代があったの?」と言える日がくるだろう。そのためにもこの2人の女性の今後を応援したい。



20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:AI関連銘柄に選別の試練、米半導体株急落

ビジネス

国内百貨店8月売上高、4社中3社が2月以来の前年比

ワールド

25年夏の平均気温は過去最高、今後も気温高くなる見

ワールド

モディ氏がプーチン氏と会談、「ロシアとインドは困難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 6
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中