最新記事

情報セキュリティー

米軍が情報流出を恐れてTikTokの使用を禁止──16年にはポケモンGOの先例も

The TikTok Threat

2020年1月23日(木)18時00分
ジョセフィン・ウルフ

magw200123_TikTok2.jpg

ポケモンGOのプレー画面 VOLKAN FURUNCU-ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

確かに米軍が短い動画を投稿するためのアプリを「サイバー面の脅威」と見なすのは少々ばかげている気もする(国防総省は2016年、政府が支給するスマホでポケモンGOを利用しないよう職員に要請)。一方、中国企業が米軍関係者から動画や位置情報、IPアドレスなどの膨大な情報を収集するのを認めるのも、望ましいことではないだろう。

しかし、米軍がこの方針の適用をどこまで拡大するかは、判断が難しい。中国企業の全てのアプリに網をかけるのか。それ以外の信頼できない国についてはどうか。たとえストラバのような国内企業のアプリでも、軍関係者からデータを収集することで、うっかり安全保障上の問題を引き起こす可能性がある。

いたちごっこは続く

米軍は新しいアプリやテクノロジーがもたらすリスクに対し、明らかに先を見越した対応を意識している。2019年末にはTikTokに加え、家庭用遺伝子検査キットの使用を控えるよう助言した。

米ヤフーニュースによると、2019年12月20日付のメモはこう警告している。「遺伝子検査は規制が不十分であり、個人情報や遺伝情報が流出する恐れがある。そのため意図しないセキュリティー上の影響が出る恐れがあり、軍と作戦行動のリスクを高める」

米軍がストラバのような事態が起きる前に反応することは理にかなっている。だがTikTokの場合と同様に、国防総省が具体的にどんな事態を想定して警告を発したかは、まだはっきりしない。また、こうした脅威の深刻さを正確に予測するのも難しい。

実際、個々のアプリやサービスに1つずつ対応することでテクノロジーの変化に追随し、TikTokやポケモンGOほど人気のない大量の外国製アプリを全て捕捉できるかどうかは分からない。

さらにモバイルアプリの広大な世界では、新しい無名のサービスがもたらすあらゆるリスクに対処することは不可能に近い。昨年12月にもアップルとグーグルが、ToTokというアプリ(TikTokではない)がアラブ首長国連邦のスパイ活動に使われていたとして、自社のアプリ配信サービスから削除したばかりだ。

米軍は結局、安全が確認された指定アプリのみダウンロード可能にして、その他は全てデフォルトで使用不可とする「ホワイトリスト・システム」に移行せざるを得ないかもしれない。さもないと、高まる脅威に対応するのは難しそうだ。

©2020 The Slate Group

<本誌2020年1月28日号掲載>

【参考記事】中国共産党の影が動画アプリ「TikTok」を覆う
【参考記事】2020年は米軍を巻き込む危機が最も起きやすい年に

20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中