最新記事

韓国社会

韓国・文在寅も心動かした「仁川のジャン・バルジャン」 その正体は?

2020年1月24日(金)19時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

空腹に耐えきれずスーパーで万引きをしたという「仁川のジャン・バルジャン」だったが JTBC News / YouTube

<日本に先駆けIRが導入された韓国・仁川市で話題になった出来事は、将来日本でも起きることかもしれない>

昨年末、韓国の仁川で起きたある小さな事件。心温まる出来事が多くの人びとの涙を誘い、日本でもTwitterなどを中心に拡散されて、知っている方もいるかもしれない。

昨年12月10日、国際空港のある都市として有名な仁川のとあるスーパーマーケットで、父子(父親34歳、息子12歳)が万引きをして捕まった。盗みの様子を見ていた店員は、すぐに二人を捕まえ警察に通報し、ほどなくして警官2人が到着した。

警官が父親に事情を聴くと、お金が無かったが、どうしてもお腹が減ってしまい、しかたなく牛乳やリンゴなど約1万ウォン(1000円相当)分の食料を盗んでしまったのだという。

体を震わせながら謝罪を続ける父親に警官が詳しい話を聞くと、糖尿病と甲状腺の持病があり、生活保護を受けているが、家族4人を食べさせるのには足りないという。病気のため、6カ月前には務めていたタクシー運転手の仕事を辞めざるをえず、奥さんとはすでに離婚。息子2人と母親を養っていかなくてはならない立場だった。

この父親の事情を聞いたスーパーマーケットの主人は「自分にも子供がいるので気持ちがわかる」と語り、万引きの罪を許すよう警官に伝えた。警官二人はそんな父親の話を涙ながらに聞き、父子を食堂に連れて行ってクッパをごちそうした。

美談はこれだけではなかった。たまたまスーパーマーケットで父親の話を聞いていた一般市民が食堂にやってきて、父親に現金20万ウォン(約2万円)の入った封筒を手渡して去っていった。警官はその後、行政福祉センターを通じて父親に職業あっせんと、息子たちには給食無料カードを手配してやったという。さらにスーパーマーケットからは、この家族に生活用品の寄付をするという申し出もあった。

仁川のジャン・バルジャンに支援の輪

この話題がニュースで伝えられると、父親は小説『レ・ミゼラブル』で、お腹を空かせパンを盗んで投獄されてしまう主人公になぞらえて「仁川のジャン・バルジャン」と呼ばれるようになった。

貧困に苦しむ人を助けたいと、仁川の福祉センターにはボランティア志願者が増え、ジャン・バルジャン家族を支援したいという申し出もあったという。万引きのあったスーパーマーケットには、全国から一家に渡してほしいと衣料やお米などの食料品が続々と届けられるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ラガルドECB総裁、任期満了が「基本方針」 WSJ

ビジネス

トランプ緊急関税、最高裁が違法判決なら1750億ド

ワールド

日ロ関係はゼロに低下、平和への対話進行していない=

ビジネス

金価格が上昇、米イラン緊張と欧州債券利回り低下で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中