最新記事

米イラン危機:戦争は起きるのか

米イラン危機、次の展開を読む――トランプはどんな代償を払ってでも勝利を目指す

NOT AFRAID TO WAG THE DOG

2020年1月17日(金)15時40分
サム・ポトリッキオ(本誌コラムニスト、ジョージタウン大学教授)

200117iranmain-2.jpg

ハメネイ師やロウハニ大統領がソレイマニのひつぎを前に祈る OFFICIAL PRESIDENT'S WEBSITEーREUTERS

トランプ擁護派が主張しているように、アメリカはアメリカ市民に深刻な損害を与えかねない強力な敵を排除した。先制的な介入と言えるものだったが、トランプ擁護派は「アメリカ・ファースト」と「偉大なアメリカの再現」の例だと信じている。

「ソレイマニの排除は、アメリカがこれから中東に深く関与するという兆しではなかった」と、保守派評論家のロジャー・キンボールは書いた。

「むしろ別れの手紙だった。トランプはアメリカ経済を活性化し、失業率を歴史的な低レベルに下げ、実質賃金を底上げした。政府の規制がもたらす無気力を払拭する重要な介入を行い、米軍を蘇生させ、不法移民を抑制した。そして今、敵を利するだけでしかない外国への介入からアメリカを救い出そうとしている」

ここで注目したいのは、メディアがトランプの愚かで常軌を逸した行動について騒ぎ立てるほど、彼の再選の可能性が高くなったこと、そしてアメリカの市場は中東の混乱にそれほど動揺していないことだ。

より正確に言えば、トランプは地政学のゲームを背後で操る黒幕ではない。全体的な戦略を持たず、世界の舞台で取るべき行動を理解できず、衝動のままに挑発行為を行う外交の初心者だ。

トランプは今回ソレイマニ殺害計画を承認したが、昨年6月にはイランに対する攻撃を中止していた。9月にはイラン指導部に対して、前提条件なしの会談まで持ち掛けていた。

そして今年1月8日、トランプはNATOが中東関与を拡大すべきだと主張した。彼はNATO主要加盟国である英仏独の多大な支援を得て成立したイラン核合意からアメリカを離脱させた張本人なのだから、まさに驚きの主張だ。

シリアとアフガニスタンをめぐる政策決定も方向転換と矛盾だらけで、アメリカは中東で何をやっているのかと同盟諸国は混乱している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国10月輸出、予想に反して-1.1% 関税重しで

ビジネス

FRB、近くバランスシート拡大も 流動性対応で=N

ビジネス

再送ホンダ、通期予想を下方修正 四輪販売低迷と半導

ビジネス

オリンパス、グローバルに2000のポジション削減 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中