最新記事

米政治

トランプのクリスマスカードに、弾劾「弁解」の異例の手紙が入っていた

2020年1月2日(木)17時25分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト)

クリスマスカードに記された2つの反論

ここで、この重要なクリスマスカードの書簡をいくつかの点から見てみよう。

まず、トランプは自分がジョー・バイデン(民主党の2020年大統領選の主要候補)の捜査をウクライナのゼレンスキー大統領に要求した件について、「do us a favor(われわれのために)」と言った、と主張している。

「do me a favor(私のために)」とは言っておらず、「me」ではなく「us」を使ったのは、ウクライナに捜査を要求したのはアメリカの国益のためで、すなわち権力の乱用ではないからだという理屈である。

トランプのウクライナ疑惑をめぐる下院の弾劾訴追条項は「権力乱用」と「議会妨害」の2つに絞られており、これは前者に対する弁解となる。

条項の2つ目の「議会妨害」についても、弾劾調査に協力しないのは「憲法に基づく大統領の特権だ」とストレートに反論している。また、トランプは民主党が当初から自分の大統領就任を認めようとせず、何が何でも弾劾するつもりだった、と訴えている。

ずっと前からトランプを外したい民主党議員がいたことは否めない。この点でトランプは上院でいくぶんかは同情を買えるだろう。ただ、議会の召喚を一律に無視できる大統領特権など存在しないので、この点は支持されにくい。

「me対us」の件に戻れば、「do us a favor」のフレーズでウクライナに要求した捜査は国のためだったという理屈は上院議員の一部に受け入れられるかもしれない。ただ、これは例えば、調査がゼレンスキー大統領のホワイトハウス訪問の交換条件だったという駐EU米大使ソンドランドの証言とバッティングしている。トランプが自分自身の利益のために動いたことはもはや疑いの余地はない。

怒りと不満に満ちたこの長文の書簡には、すべて大文字の語(叫んでいるかのようで品がなく、公式書簡にはまず見られない)や感嘆符(ビックリマーク)が含まれていた。例えば、「(ペロシ氏よ)貴女は『トランプ発狂症候群』と呼ばれてきたものにかかっている!」とか、「貴女は民主主義を敵と見なしている!」といったくだりがそうだ。

書簡ではまた、ロシア疑惑に絡んでトランプが解任した前FBI長官のジェームズ・コミーを「米国史上最も汚い警官のひとり」として罵っている。さらには、別の人物を引用している箇所で、放送禁止用語までもが含まれていた。書簡というよりは巨大なツイート、といったところだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ビジネス

中国万科、最終的な債務再編まで何度も返済猶予か=ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中