最新記事

米政治

トランプのクリスマスカードに、弾劾「弁解」の異例の手紙が入っていた

2020年1月2日(木)17時25分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト)

2019年12月5日、ワシントンのクリスマス・セレモニーにて Tom Brenner-REUTERS

<12月、通常のクリスマスカードと異なる、3点セットの異例なメッセージがホワイトハウスから関係者らに配られた。それはこれから始まる弾劾裁判における、トランプの唯一の弁解の証言でもある>

2019年12月18日、ほぼ20年ぶりに米国大統領の弾劾決議案が下院で可決された。しかし、ドナルド・トランプが上院での裁判によって権力から追放されるかどうか、未定のまま年末年始の休暇に入ってしまった。

ホワイトハウスにとってクリスマスは重要な行事だ。約90年前から、歴代大統領のためにカスタムメードのカードを作り、スタッフや支持者、連邦議会議員、そして外交パートナーなどにそれを送るという伝統を続けている。

大統領のクリスマスカードは、米国立公文書記録管理局で保管される。大きさは通常、日本の年賀状とほぼ同じで、2~3行の挨拶文に大統領のサインが付くというシンプルな作りだが、限定品なだけに、価値が付く。ものによっては2000円から2万円で売買されている。

2019年のトランプのカードがコレクターにどのように見られるか、ちょっと気になる。まず、カードが1枚ではなく、2枚。一つは通常の大きさのもので、もう一つはその4倍もの大きさだった。これに大統領自筆の手紙が挟まれているので、珍しく3点セットというわけだ。

しかも、その手紙は2700ワードで6ページにわたるもの。内容は季節を祝うものでも、新年の抱負を表明するものでもなく、自分が弾劾訴追されたことに対する激しい抗議文だったのだ。

このクリスマスカードを重視すべき理由がある。手紙の内容は12月17日にホワイトハウスが公表した、トランプからナンシー・ペロシ下院議長(民主党)に宛てた書簡と同じなのだが、そこにトランプの弁解が入っている。そして、そこにしか入っていない。

1998年に同じ弾劾調査にあったビル・クリントンは、 連邦大陪審で自分の弁護をした。1974年に弾劾訴追される寸前に辞任したリチャード・ニクソンは召喚に応じ、議会が要求した大統領執務内の会話記録を手渡し、中心的なスタッフが喚問を受けた。そして1868年に弾劾訴追されたアンドリュー・ジョンソンも、必要とされた証拠を議会に提出した。

裁かれながらその裁きを認めず、調査に協力しない唯一の大統領がトランプだ。トランプはこれまで下院の弾劾公聴会への書類提出などを拒否してきた。その結果、議会の訴えが国民に見えても、それに対するトランプ側の公式弁護は見えないままとなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落、1000円超安で今年最大の下げ

ワールド

中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明、無所属候

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中